ごみの排出事業者には責任がある!?
日常生活や事業を行うなかで、排出されるごみ。コロナ禍で家庭ごみが増加したり、感染対策などのために事業所でこれまで排出されなかったようなごみが出てきたりなんてこともあると思います。
以前の記事【分かりづらい「ゴミ(廃棄物)」の分別のお悩みはエコ・ブレインまで!】で紹介したように、ごみの分別はその種類はもちろん、排出者によっても分別がなされ、処理方法も異なっているのです。
「一般廃棄物」は区市町村が処理について責任を持ちますが、一般廃棄物のなかでも「事業系一般廃棄物」そして「産業廃棄物」は、排出事業者が自らの責任で適正に処理することが義務付けられているのです。
「排出事業者責任」とは?
上で記したように、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」で、事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない、また自ら処理しなければならないとされています。これにより、排出事業者の処理責任が明確化されています。
また、「事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物に再生利用等を行うことによりその減量に努める」、「事業者は、廃棄物の減量その他その適正な処理の確保等に関し地方公共団体の施策に協力しなければならない」ことが規定されています。
排出事業者責任の概要は次のようになっています。
事業者は、産業廃棄物を自ら処理しなければなりません。
・多量排出事業者の計画策定義務
多量排出事業者は、産業廃棄物の減量や処理に関する計画を作成し、都道府県知事に提出しなければなりません。
※多量排出事業者…事業活動にともない、多量の産業廃棄物が出る事業場を設置しており、産業廃棄物の前年度の発生量が合計1,000トン以上、または、特別管理産業廃棄物の前年度の発生量が50トン以上の事業場を設置している事業者のこと
・委託基準の遵守
産業廃棄物の処理を委託する場合には、政令で定める委託基準に従わなければなりません。
産業廃棄物の処理を委託した場合、産業廃棄物の処理の状況に関する確認、発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置(適正な処理料金の負担など)を講ずるように努めなければなりません。
・管理票交付義務
排出事業者は、産業廃棄物の処理を処理業者に委託する場合、電子マニフェストの登録または紙マニフェストの交付をしなければなりません。
・委託した処理が不適正に行われた場合の措置命令
産業廃棄物処理基準に適合しない産業廃棄物の処分が行われ、生活環境の保全上支障が生じ、または生ずるおそれがあると認められるときは、下記の排出事業者は措置命令の対象となります。
┗委託基準に違反
┗マニフェストに係る義務に違反
┗その他処理に関して適正な対価を負担していないなどの注意義務に違反など
産業廃棄物の収集・運搬、処理を委託する場合、法律上で委託基準があり、次のように定められています。
・委託先業者は廃棄物の種類ごとに自治体の許可を得ていること
・委託先業者は、産業廃棄物の処理が事業の範囲に含まれていること
・委託契約は書面で行うこと
・特別管理産業廃棄物の処理の場合、あらかじめ種類、数量、性状、荷姿、取り扱い上 の注意事項を書面で通知すること
・契約書、契約書に添付された書類は契約終了日から5年間保存すること
・収集運搬の委託は収集運搬業の許可を持つものと、中間処理(再生を含む)または最終処分の委託は処分業の許可を持つものと、それぞれ2者間で契約すること
罰則もあるって本当?
委託基準が守られないと懲役刑や罰金刑に問われることもあります。排出事業者ではなく、委託した処理業者が不法投棄等を行った場合においても、排出事業者が原状回復の措置命令等の行政処分の対象となる場合があるため、委託先は慎重に選ぶ必要があります。
委託基準の違反以外にも、排出事業者責任に違反した場合の罰則は複数あります。
排出事業者に係る主な罰則一覧(平成30年4月1日時点)
措置命令違反 | 生活環境上の保全上の除去又は発生の防止のために出された措置命令に違反 | 5 年以下の懲役若しくは 1 千万円以下の罰金又は併科 |
無許可業者へ の委託基準 | 廃棄物の運搬又は処分を無許可業者に委託 | |
廃棄物の投棄禁止違反 | 廃棄物をみだりに投棄または未遂 | |
廃棄物の焼却禁止違反 | 廃棄物処理基準に適合しない施設で、廃棄物を違法に焼却または未遂 | |
委託基準違反 | 廃棄物の運搬または処分もしくは再生等に関する処理委託基準に違反 | 3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金または併科 |
改善命令違反 | 廃棄物の適正な処理のための保管、収集、運搬又は処分の方法の変更等に関する改善命令に違反 | |
マニフェスト 交付義務等違反 | 産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託し、廃棄物を引渡すとき管理票を交付せず、又は記載すべき事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をして交付 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
マニフェスト 保存義務違反 | 産業廃棄物の運搬業者又は処分委託者に交付した管理票の写しを5年間保存しなかった | |
勧告命令義務違反 | 産業廃棄物管理票の適正処理に関して出された勧告に係る命令に違反 | |
事業場外保管 届出義務違反 | 産業廃棄物を届出せず、又は虚偽の届出により、事業場外に保管 | 6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金 |
処理責任者等 設置義務違反 | 産業廃棄物の処理業務を適切に行わせるための責任者を置かなかった者 | 30万円以下の罰金 |
報告義務違反 | 廃棄物の保管、収集、運搬若しくは処分等の第 18 条に係る報告の求めに対し、報告の拒否又は虚偽の報告 | |
立入検査の | 廃棄物の若しくは廃棄物の疑いがあるものの保管、収集、運搬若しくは処分等に関する帳簿書類その他の物件の検査をしようとしたとき、検査を拒み、妨げ、又は忌避 | |
事業場外保管 届出義務違反 | 産業廃棄物を事業場外に保管し、14 日以内に届出をしなかった | 20万円以下の過料 |
処理計画 | 産業廃棄物の多量排出事業者が処置計画を提出せず、又は虚偽の記載をして提出 | |
処理状況報告 義務違反 | 多量排出事業者が処置状況を報告せず、又は虚偽の報告 | |
両罰規定 | 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業員が、その法人又は人の業務に関し、違反行為をしたときは、行為者を罰するほかその法人又は人も罰せられます | 法人に3億円以下の罰金刑、各条規定の罰金刑 |
排出事業者に係る罰則はいずれも軽いものではありません。違反事項に触れないために、排出事業者の責任を理解し、事業所で排出されている産業廃棄物の状況を確認・把握する必要があります。
しかし、マニフェストの交付や委託基準に適した委託事業者の選定など、ややこしく手間取るものもあります。事業所の廃棄物の現状把握やコンプライアンス強化をお考えで、「時間がない」「何から手を付ければいいかわからない」とお困りの方は、ぜひ当社までお問い合わせください。
長年ごみ問題に携わってきた専門家が集まる弊社が、ごみ処理管理やマニフェスト・行政資料作成など、みなさまの廃棄物に関するお悩み解決をお手伝いいたします。
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