エネルギー価格高騰の理由、光熱費の推移・今後は?
2023/05/17
天然ガス・石油・石炭など、化石燃料のエネルギー価格が高騰しています。それに伴い電気代、ガス代も価格上昇も激しくなってきています。家計を圧迫することになるのはもちろん、企業や自治体でもエネルギー支出が増えると事業や運営にも影響が出てきます。
今回はエネルギー価格高騰の原因はどこにあるのか、そして電気代やガス代の推移、今後どうなるのかについてまとめていきます。
(写真素材:photo AC)
エネルギー価格が高騰している背景は?
2023年に入って下落傾向に転じてきていますが、2020〜2022年のうちに石油と天然ガスは約5倍、石炭は約8倍に値上がりしています。2022年には過去最高値を記録するなど、近年のエネルギー価格の高騰は著しいです。
※出典:世界経済のネタ帳
エネルギー価格高騰の主な原因は下記です。
新型コロナウイルス感染症拡大により、世界的な行動制限や渡航制限に伴ってガソリンや航空燃料等の急激な需要減が生じました。しかし、2020年後半からは各国政府による経済刺激策などから全世界的に経済が活況を取り戻し、世界のエネルギー需要は急激に回復。燃料需要が増え、供給不足、供給の不安定さから、天然ガスや石炭等の価格は過去最高水準に達し、エネルギー分野に大きな混乱を生じさせました。
・円安ドル高の進行
・ロシア・ウクライナ問題
日本は、発電に必要な燃料のほとんどを輸入に頼っています。そのため、円が安くなれば海外からの輸入はコストがかさみ、電気代高騰の大きな要因の1つとなっています。一時期の急激な円安状態からは解放されましたが、今後円が持ち直しを図れるのかどうかは不透明な状況です。
2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻もエネルギー価格高騰の原因の一つです。ウクライナへの侵攻後、ロシアはアメリカやEUにより経済的制裁を受けており、ロシアからの輸入が制限されています。ロシアは天然ガスの輸出額世界1位(2021年)、石油輸出額世界2位(2021年)の資源大国。その結果、エネルギーの需給は更に混迷を深め不確実性が高まり、国際的なエネルギー争奪戦となり、価格が上昇するようになりました。
電気代の現状と今後の見通しは?
■電気代の仕組み
まず、電気料金の仕組みについて見ていきましょう。一般的な電気料金は次のように算出されます。
・電気料金=基本料金+電力量料金+再生可能エネルギー発電促進賦課金
・電力量料金 =(電力量料金単価 × 使用電力量)± 燃料費調整額(燃料費調整単価 × 使用電力量)
基本料金は毎月定額で、電力量料金と再生可能エネルギー発電促進賦課金は1ヵ月の使用電力量に応じて変動します。電力量料金は、実際に使った電力量に対して支払う料金です。電力量料金単価の設定は電力会社のプランによって異なります。そして、燃料価格の変動に応じて燃料費調整額を加算あるいは差し引きして計算します。
貿易統計における原油、LNG(液化天然ガス)、石炭などの燃料価格などから算出される、その時々の平均燃料価格により毎月変動する調整額のこと。燃料価格が上昇したときには電気料金に加算され、燃料価格が低下したときには電気料金から差し引かれます。
電力使用量1kWhあたりの燃料費調整額は「燃料費調整単価」と呼ばれ、過去3カ月間の燃料価格の平均を計算して調整し算出されます。電気料金に反映されるのはその2カ月後になります。
「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT法)」によって電力会社等が再生可能エネルギー電気の買い取りに要した費用を、電気の使用者が使用量に応じて負担するもの。電気を使うすべての人が負担し、再エネ賦課金の単価は全国一律になるよう調整されます。
<再エネ賦課金の算定方法>
再エネ賦課金=使用した電気量(kWh)×1.40円/kWh※2023年5月検針分から適用される単価
■電気代の推移と現状
2023年5月現在の電気料金の状況を見ていきます。下記は電気料金の推移を示す指標である、燃料調整額(東京電力/高圧)の推移です。高圧の推移になりますが、低圧や特別高圧も概ね同様の傾向になっています。
ピークだった2023年1月と比較すれば値下がりしていますが、高騰前の2021年9月以前と比較するとまだまだ高値です。燃料費高騰により燃料費調整額も上がっていましたが、天然ガス・石炭価格および円安の落ち着きにより電気代は下落に転じています。また、2023年5月検針分から再エネ賦課金が値下がりしたことも背景にあります。再エネ賦課金は、2022年度(2022年5月分〜2023年4月分)の3.45円/kWhから1.40円/kWhと-2.05円(約59%減となっています。さらに、電気料金が少し値下がりした要因には、政府による負担緩和策が挙げられます。
2023年1月から、電気代・ガス代高騰対策として政府が開始する負担軽減策「電気・ガス価格激変緩和対策事業」が開始されています。
電気代・ガス代の補助は、2023年1月使用分(2月検針分)から2023年9月使用分(10月検針分)まで。2023年9月使用分だけ補助額が半減されます。同年10月使用分(11月検針分)以降の実施に関する発表はありません。
【低圧契約(主に家庭)】値引き単価:7円/kWh(9月使用分は3.5円/kWh)
【高圧契約(主に企業)】値引き単価:3.5円/kWh(9月使用分は1.8円/kWh)
標準世帯で2,800円/月の負担軽減
値引き単価:30円/㎥は15円/m3)
標準世帯で900円/月の負担軽減
※家庭及び年間契約量1,000万m3未満の企業等が対象
■今後の見通し
燃料費の推移から2023年以降は少し下がると予想されます。しかし、燃料費高騰の原因である「ロシア・ウクライナ問題」の見通しがついていないため、高止まりが続く可能性もあります。また、再エネ賦課金についても2024年度以降の価格は未定であり、今後、値上げが続く可能性が考えられます。さらに、9月末までが期限となっている政府の負担軽減策が終われば標準的な家庭では月2800円負担が増えることになり、家計の負担増加が予想されます。
★5/16、政府が大手電力7社の電気料金の値上げを了承
大手電力7社が国に申請している家庭向け電気料金の値上げが了承されました。標準的な家庭の電気料金の値上げ幅は14〜42%になり、値上げは6月の使用分から実施される見通しです。改定される6月の新料金は7月に請求されます。
経済産業省によると、1か月当たり400キロワットアワー利用する家庭を標準的な家庭として、値上げを申請する前の去年11月分と比べた試算は以下のようになっています。
- 北海道電力:1万5662円→1万8885円(21%値上がり)
- 東北電力:1万3475円→1万6657円(24%値上がり)
- 東京電力:1万4444円→1万6522円(14%値上がり)
- 北陸電力:1万1155円→1万5879円(42%値上がり)
- 中国電力:1万3012円→1万6814円(29%値上がり)
- 四国電力:1万2884円→1万6123円(25%値上がり)
- 沖縄電力:1万4074円→1万9397円(38%値上がり)
ガス代の現状と今後の見通しは?
■ガス代の仕組み
一般的なガス料金は次のように算出されます。
・ガス料金=基本料金+従量料金(単位料金×ガス使用量(㎥))
・単位料金=従量料金単価±原料費調整額
都市ガスの原料となるLNGやLPG(液化石油ガス)それぞれの3か月間の貿易統計価格にもとづき、毎月平均原料価格を算定します。算定された平均原料価格と、基準原料価格との比較による差分にもとづき、原料費調整単価を算定し、直近のガス料金に反映します。平均原料価格が上昇した場合は原料費調整単価がプラスとなり、原料価格が低下した場合は原料費調整単価がマイナスとなります。
■ガス代の推移と現状
2023年5月現在のガス代の状況を見ていきます。下記は2021年1月~2023年3月の期間の国内の平均都市ガス代の推移です。最も高かった最高値は2023年1月で8,905円となっています。
出典元:総務省統計局 小売物価統計調査(2023年3月)
2023年1月をピークに現在は下落傾向を見せています。しかし、それでも以前と比較するとまだまだ高値をつけています。ガス料金の値上げは、ウクライナ情勢や円安などの影響によって、LNGの高騰が続き「原料費調整額」が高くなっていることが原因。今は電気代と同様、天然ガス・石炭価格および円安の落ち着きにより下落に転じています。また、2023年1月以降の使用分からは、国の負担緩和策が適用されているため値下げに向かっているものと見られます。
■今後の見通し
2023年1月以降の使用分から2023年9月使用分までは、国の負担緩和策が適用されるため短期的には値下げに向かうでしょう。しかし、ロシアのウクライナ侵攻をはじめとする要因から、原料価格の上昇など不安材料もあり予断を許さない状況です。
また、原料費調整額についても懸念点があります。これまで原料費調整額は、ガス会社が独自に上限を設定し、超過分はガス会社が負担していました。ガス料金の急激な値上がりを防ぐ役割を果たしていましたが、この上限を引き上げたり撤廃する動きが見られています。価格転嫁の上限が上がる、なくなるということは上昇分は消費者がすべて負担することになります。すでに撤廃を決めた会社も多く、結果としてガス料金の値上げにつながると見込まれています。
いかがでしたでしょうか?
エネルギー価格の高騰は、世界中の人々の頭を悩ませ、多くの企業を苦しめています。エネルギー価格が高騰すれば、電気代やガス代をはじめ、様々なものに影響を与えます。特に電気やガスは普段の日常生活はもちろん、事業を進めていくにあたり必要不可欠なものです。エネルギー価格および光熱費の値上がりはいったん落ち着きを見せていますが、今後の予断を許さない状況にあります。今が、再生可能エネルギーについて真剣に考えるタイミングなのかもしれません。
これからは企業にも個人にも、脱炭素や再生可能エネルギーに対する取り組みが求められていくことでしょう。再生可能エネルギー発電へのシフトを考えている場合は、制度や助成金などの支援制度を調べてみても良いでしょう。
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