SAF=持続可能な航空燃料とは?【後編】
2023/03/31
航空業界の気候変動対策として、期待されている燃料が「SAF」です。
持続可能な航空燃料「SAF」について、前後編に分けて解説しています。前編では、SAFの原料や製造方法など概要を解説。
後編となる今回は、SAFが注目されている理由やSAFのメリット、課題をまとめています。
(写真素材:photo AC)
SAFが注目されている理由とは?
改めて、SAFが注目を集めている背景を見ていきましょう。
■気候変動問題の深刻化
地球温暖化がもたらす気候変動は深刻化しており、世界の平均気温や海水温度の上昇、北極域の海氷の減少、台風の発生頻度の増加などに影響を及ぼしています。また、将来的にはの気候変動問題により、農作物や生態系への大きな悪影響をもたらすと予測されており、気候変動対策は現在、世界全体で取り組むべき喫緊の課題となっています。
そして、気候変動問題解決に向けては、温室効果ガスの排出量の削減に取り組むことが有効とされています。特に、航空機のCO2排出量は人類全体の2〜3%にも及ぶとされ、航空業界ではCO2排出軽減の取り組みが求められています。
国際民間航空会社の団体である国際民間航空機関(ICAO)は2022年10月に、国際航空分野で2050年までに二酸化炭素の排出を実質ゼロにする長期目標を採択しました。2010年に策定された「2020年以降、国際航空からのCO2総排出量を増加させない」との目標から、方針をネットゼロの排出削減目標へと転換しています。航空機によるCO2排出量削減には、SAFの導入推進が有効的とされ、この目標においてもSAFの開発・増産などの加速化を必要としています。
■カーボンニュートラル社会の実現
現在、世界各国で「カーボンニュートラル社会」の実現へ向けた取り組みが行われています。これは、温室効果ガスの排出量と吸収量を同じにすることで、温室効果ガスの実質的な排出量をゼロにするというもの。
2015年に採択され2020年から運用開始した「パリ協定」では、「世界の平均気温上昇を2℃より低く保つとともに1.5℃に抑える努力をすること」および「温室効果ガスの排出量と吸収量のバランスをとること」が世界共通の長期的な目標として掲げられました。
日本でも2020年10月に「2050年にカーボンニュートラルを目指す」ことが表明され、アメリカやEUなどでもカーボンニュートラル社会の実現に向けた宣言や取り組みが行われています。
カーボンニュートラル社会を実現するためには、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を削減するだけでなく、二酸化炭素を吸収する仕組みを作り、強化する必要があります。
SAFは従来の化石燃料と比べ、約80%の二酸化炭素の排出量を軽減することができるとされています。さらに、原料である植物による二酸化炭素の吸収を加えると、SAFの生産と燃焼のサイクルのなかで二酸化炭素の排出量を差し引き0にできます。
SAFはカーボンニュートラル社会を実現するために重要な仕組みであるといえます。
■航空燃料の国産化への動き
日本国内では航空機燃料の原料となる石油を産出できないため、現在は輸入に頼っている状態です。しかし最近は、新型コロナウイルス禍やウクライナ危機などの社会情勢の影響から、資源価格の急騰や流通ルート確保の困難などが課題となっています。
SAFは従来の航空燃料とは異なり、植物や廃棄物を原材料とするため、日本国内でも調達が可能です。SAFのサプライチェーンが構築できれば、日本国内での航空燃料の製造も可能となります。外部の社会情勢に関わらず、航空燃料の安定的な供給が実現できるでしょう。またこれにより、空路の確保や航空運賃の安定化などのメリットも得られます。
SAFのメリットとは?
SAFのメリットは何でしょうか?
■CO2の排出量を増やさない
従来使われてきた航空燃料の原料は主に化石燃料です。化石燃料は燃焼時にCO2を多く排出するため、地球温暖化を加速させることに繋がってしまいます。
一方、バイオマス由来のSAF燃料はCO2の総量を増加させないネットゼロの燃料と言われています。バイオマス由来のSAFも燃焼時にはCO2を排出しますが、原料となる植物が生育時に大気中にあるCO2を光合成によって取り込むため、大気中のCO2総量は変わらないと考えられています。
■従来の燃料と同じように使用可能
SAFは従来の航空燃料とは異なる原料から製造されていますが、燃料としての特性は従来の燃料とほとんど変わりません。従来の燃料と同一のものとして取り扱いができ、SAFと化石燃料由来の燃料を混合して使用することもできます。
そのため、航空機、エンジン燃料システム、流通インフラ、貯蔵施設など、従来の設備をそのまま流用することが可能です。SAFは導入ハードルが低く、すぐにでも導入することができる優秀な次世代型燃料と言えます。
■長距離航路にも利用できる
航空機における二酸化炭素排出量の削減への取り組みとして、機材・装備品等への新技術導入が求められています。その一環として、燃料を電気とする電気航空機、水素とする水素航空機の開発が進められています。
しかし、電気航空機と水素航空機は、出力と重量のバランスやスペースの確保などの問題から、小型の機体や短距離航路にしか導入できないという欠点があります。また、電気や水素を活用する場合はインフラ整備インフラ整備などが必要となるため、SAFに比べると導入への障壁は高いと言えます。
一方、SAFは従来の化石燃料と同じような取り扱いができるため、中長距離の航路や大型旅客機の燃料にも使用することができます。
SAFの課題とは?
SAFには様々なメリットがありますが、SAFの普及には解決しなければならない課題も存在しています。
■供給量が少ない
SAF供給量は2020年時点で約6.3万キロリットルと、世界のジェット燃料供給量のわずか0.03%。一方でSAFの世界需要は2050年に約2.94億キロリットル〜約4.25億キロリットルに達すると見込まれています。また、国内需要も2030年に約250万キロリットル〜約560万キロリットル、2050年には約2,300万キロリットルに拡大するとの予測がされています。
30年までに10%の目標達成の見込みは立っておらず、早期のSAFの供給の安定化が求められますが、日本は欧米に比べると遅れている状況にあります。
■製造コストが高い
「持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた官民協議会」では、価格目標として「2030年までに100円/リットル台」が目標として掲げられている。一方SAFの生産コストは製造方法によって差異はあるものの、現状1リットルあたり200〜1600円。従来のジェット燃料と比べると2〜16倍とかなり割高で、SAFの普及にあたって高いハードルになっていると言えます。
SAFの導入促進のためには、低コストでの製造技術の開発および、安定的に供給できる体制の構築が必要でしょう。
■原料の確保が難しい
SAFの供給不足には、原料確保の難しさが背景にあります。SAFは様々なものを原料として製造できますが、燃料の原料として使用するためには十分な量の確保が必要です。
世界中でSAFの生産や導入のための動きが加速化しており、原料の争奪戦がすでに始まっています。SAF原料の一つである廃油は全世界で買い取る動きが出ており、日本国内の廃食用油は40〜50万klほどしか存在せしないものの、うち約10万klは海外に輸出されている状況にあります。
安定的に原料を集め、製造を行う生産体制や技術構築が課題となっています。
SAFの現状は?
SAFの現状について、日本国内と国外でそれぞれ見ていきましょう。
■日本
日本国内では、2021年10月に国土交通省が「2030年時点で国内の航空会社による燃料使用量の10%をSAFへ置き換える」という導入目標を策定しました。また、2050年には航空輸送における二酸化炭素の排出実質ゼロが目指されています。
SAFの国産化のため製造技術の確立や普及に向けて、経済産業省は各団体・企業と連携した技術開発や実証実験を進めています。しかし、商用化が実現するのは2030年頃の見込みです。
■諸外国
・EU
EUでは2050年までにゼロエミッション(温室効果ガス(GHG)排出量ゼロ)の達成を目指し、SAFの導入促進が行われています。
2021年7月14日に発表した、総合的な気候変動対策パッケージ”Fit For 55”の1つである”ReFuelEU Aviation規則案“において、燃料供給者に対して2050年までのSAF導入義務が提案されました。使用される航空燃料のうち、2030年において5%、2040年において32%、2050年において63%をSAFが占めるよう義務づけることが提案されています。
・アメリカ
アメリカでは2021年9月に、2050年までに航空部門で使用される燃料を全てSAFに置き換えるという目標を掲げました。同時に、2030年までに30億ガロン(約1,140万kL)(2030年における燃料需要の10%に相当)、2050年までに約350億ガロン(約1.3億kL)のSAFを生産・利用することも目指されています。
目標達成に向け、SAFの生産量拡大が進められており、SAFについて税制優遇政策をとり、SAFの生産・利用に携わる企業への資金援助を行っています。また、商用化に向けた計画やプラントの建設など技術開発が進められています。
いかがでしたでしょうか?
前回から持続可能な航空燃料の「SAF」についてまとめてきました。
気候変動は私たちの生活に様々な影響を及ぼすとされ、気候変動問題の解決に向けてはカーボンニュートラル社会の実現など世界中でアクションが進められています。日本では2050年までのカーボンニュートラルを目指していますが、達成するにはまだまだCO2の排出削減が必要です。企業によるCO2排出削減はより一層求められていくことでしょう。
そして、航空部門のCO2排出削減策として注目を集めている「SAF」の今後の展開にも目が離せません。
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