無害化処理認定制度とは? 概要から認定内容まで解説
2022/12/07
廃棄物処理法では廃棄物処理業を行う場合や、廃棄物処理施設を設ける場合にはそれぞれ各市町村や各都道府県の許可が必要になります。しかし、環境大臣の認定を受けることで、一定の許可なく処理できる仕組みがあります。
今回はその仕組みの中でも、「無害化処理認定制度」について解説します。
無害化処理認定制度とは?
無害化処理認定制度とは、石綿(アスベスト)が含まれている廃棄物など、人の健康や生活環境に被害を生ずるおそれのある廃棄物を処理する際に適用される制度です。溶融などの高度な技術を用いた無害化処理を行う者を、個々に環境大臣が認定することで都道府県知事の許可を得た施設での処理が必要であると定めた新しい処理制度になります。
平成18年の改正で設けられ、平成21年11月には対象の産業廃棄物に微量PCB汚染廃家電機器等が追加されました。また、令和元年12月に関連する法律施行規則等に改変が入っています。
アスベストは過去の知見から、1500℃以上の高熱で処理した場合であれば問題なく溶融され、無害化されることが知られていました。そのため、従前の溶融による無害化は、 1500℃以上で溶融することを無害化処理に必要な条件としていました。
さらに、石綿含有廃棄物等の不適正処理等を防止し、溶融施設をより効率的に活用するため、多物質との混合溶融など上記以外の方法による無害化処理の促進を図るため創設されたのが 「無害化処理認定制度」です。
対象となる廃棄物は?
無害化処理認定制度の対象となる廃棄物は以下の通りです。
石綿(アスベスト)を含む廃棄物 | ①廃石綿等 ②石綿含有一般廃棄物(工作物(建築物を含む。以下同じ)の新築、改築または除去に伴って生じた一般廃棄物であって、石綿をその重量の0.1%を超えて含有するもの) ③石綿含有産業廃棄物(工作物の新築、改築または除去に伴って生じた産業廃棄物であって、石綿をその重量の0.1%を超えて含有するもの) |
微量PCB汚染廃家電機器等 | 無害化処理認定を受けた者は、認定に係る収集運搬業または処分業の許可、産業廃棄物処理施設の設置の許可は不要となりますが、処理基準の遵守、マニフェストの交付、帳簿の記載・保存等の適用を受けます。 |
認定の要件は?
無害化処理認定制度の認定要件は、以下の通り示されています。
・当該無害化処理の内容が、「石綿含有廃棄物等」の迅速かつ安全な処理の確保に資するものとして環境省令で定める基準に適合すること。(処理内容(方法・技術)に関する要件)
・無害化処理を行い、行おうとする者が環境省令に定める基準に適合すること。(処理実施者に関する要件)
・設置し、設置しようとする当該無害化処理の用に供する施設が環境省令で定める基準に適合すること。(施設に関する要件)
なお、これらの詳細については、平成18年環境省告示第99号をご覧下さい。
※引用:環境省「無害化処理認定制度Q&A」(PDF)
■処理内容(方法・技術)に関する要件
1. 石綿含有一般廃棄物等の無害化処理の用に供する施設の一日当たりの処理能力が五トン以上であること
2. 排ガス中の石綿の濃度が人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれのないものであること
3. 排ガス処理設備によりばいじんを除去し、又は集じん器により粉じんを除去する場合には、当該ばいじん又は粉じんについて、当該無害化処理の用に供する施設において無害化処理を行い、又はセメント固化をするものであること
■処理実施者に関する要件
1. 無害化処理に伴い生ずる物(ばいじんを除く。以下「無害化処理生成物」という。)の性状が人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれのないものとなるよう、無害化処理生成物の性状の確認及び管理を適切に行うことができる者であること
※無害化処理は、個人レベルでの判断が必要なわけではなく、無害化処理生成物の適切な分析を、自らもしくは委託することにより最終的に石綿が無害化されていることを確認することを重要視しています。そのため、自ら分析装置及び分析技術者を有する必要があるわけではありません。
2. 無害化処理の用に供する施設が溶融施設である場合には、次に掲げる基準に従い当該施設の維持管理をすることができる者であること
・規則第十二条の七第十三項第一号、第四号、第五号、第七号、第八号、第十号及び第十一号の規定の例によること
・溶融炉内に投入された石綿含有一般廃棄物の温度を速やかに無害化処理を行うことができる温度以上とし、これを保つこと
・溶融炉内に投入された石綿含有一般廃棄物の数量及び性状に応じ、無害化処理に必要な滞留時間を調節すること
・無害化処理生成物が第一条に規定する基準に適合していることを確認するための試験を六月に一回以上行い、かつ、その結果を記録すること
・溶融炉が適正に稼働していることを確認するため、無害化処理生成物の流動状態が適正であることを定期的に確認すること
■施設に関する要件
1. 規則第十二条の二第十三項第一号、第三号、第四号及び第六号の規定の例によること。
2. 次の要件を備えた溶融炉が設けられていること。
・石綿含有一般廃棄物を無害化処理を行うことができる温度以上の状態で溶融することができるものであること
・上の温度を石綿含有一般廃棄物の無害化処理に必要な滞留時間の間保つことができるものであること
・適切な溶融炉内の温度を保つため、溶融炉内の空気量を調節することができる設備その他の必要な設備が設けられていること
3. 無害化処理生成物の流動状態が確認できる設備が設けられていること
認定の流れは?
無害化処理認定の申請から認定まで流れは、以下のようになっています。
①制度説明、事前相談・調整
施設を設置する地域を所轄する地方環境事務所で、無害化処理認定制度に詳しい内容や趣旨等について説明を受けます。その後、技術的内容など詳細な事項について、環境省産業廃棄物課と協議・調整を行います。
②申請、申請書チェック、受理
地方環境事務所に申請書類を提出します。審査に必要な部数については地方環境事務所から指定されます。地方環境事務所では、書類が揃っていれば、受理します。
【必要書類】
認定申請には「無害化処理認定申請書」とその添付書類(施設の図面や実証試験の結果を記した書面など)が必要です。なお無害化処理認定申請書は環境省のホームページからダウンロードできます。
③環境本省(大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課・産業廃棄物課)での審査
④告示、知事等への通知、縦覧(縦覧期間1か月)
申請内容について告示と知事等への通知が行われ、意見を集めるために縦覧されます。
⑤関係者からの意見書、知事等意見受理
関係者からの意見書や知事等からの意見を受理します。
⑥⑤を踏まえた審査、有識者意見聴取
⑦認定/認定拒否決定、審査結果通知、認定書交付
認定の場合、環境本省より、申請者に連絡等がなされます。
⑧事後調査等
地方環境事務所等による検査があります。
※参照:環境省「無害化処理認定制度Q&A」(PDF)
認定の優遇措置とは?
無害化処理認定を受けるには、さまざまな要件を満たし厳しい審査を通過する必要があります。また、常に一定以上の精度で廃棄物処理が遂行していかなければなりません。一方で、無害化処理認定施設に認定されると、以下のような優遇措置があります。
・一般廃棄物に係る認定を受けた者
一般廃棄物処理(収集運搬、処分)業の許可、一般廃棄物処理施設の設置許可が不要
・(特別管理)産業廃棄物に係る認定を受けた者
(特別管理)産業廃棄物処理(収集運搬、処分)業の許可、産業廃棄物処理施設の設置許可が不要
上記のような措置があるのは、認定に際する審査を通じて、無害化処理を業として適正に行う能力、設置する施設の安全性等が確認されるためです。
ただし、有機物を含む他の廃棄物と合わせて溶融処理する場合など、処理方法によっては、廃棄物処理業や廃棄物処理施設の許可が別途必要となりますので、都道府県又は政令市と別途協議が必要となります。
実際に廃棄物処理を行う際の注意点とは?
無害化処理認定制度の認定を受けると、処理業や施設の許可は不要となる優遇措置があります。しかし、実際に廃棄物処理を行う際は処理基準の遵守やマニュフェストの交付等、以下が求められます。
■処理基準の遵守
無害化処理認定制度の認定を受けた者は、廃棄物収集運搬業者及び処分業者とみなされ、処理基準が適用されます。一般廃棄物に係る認定を受けた者は (特別管理)一般廃棄物処理基準に従って、産業廃棄物に係る認定を受けた者は (特別管理)産業廃棄物処理基準に従って、処理を行う必要があります。
■マニフェスト(産業廃棄物管理票)の交付、帳簿の記載・保存義務
無害化処理認定制度が、人の健康及び生活環境に係る被害を生じるおそれがある廃棄物を対象としていること、その処理の流れを適正に把握することが必要であること等から、無害化処理認定を受けた者に対しても、通常の廃棄物処理と同様にマニフェスト(産業廃棄物処理管理票)に係る義務、廃棄物処理に関する帳簿の記録、保存義務が課されます。
■無害化処理に関する報告書
毎年度の無害化処理に関して、以下の事項を記載した報告書を毎年6月末までに環境大臣宛てに提出しなければなりません。提出先は、施設を設置する地域を管轄する地方環境事務所となります。
【報告すべき事項】
- 氏名または名称および住所 (さらに法人の場合は代表者氏名)
- 認定年月日および認定番号
- 当該認定に係る施設において無害化処理を行った廃棄物の種類および量
- その他環境大臣が定める事項
いかがでしたでしょうか?
今回は無害化処理認定制度について解説しました。
無害化処理の認定を受けるには、厳しい審査に合格しなければならず、常に一定以上の精度で廃棄物処理を遂行しなければなりません。また、令和元年12月には関連する法律施行規則等に改変が入っており、正しい情報の把握が必要です。
しかし、その一方で無害化処理認定施設に認定されると廃棄物処理業の許可、施設設置の許可が不要となるといった優遇措置があります。無害化処理認定制度をパスすることは、当該業者・施設がクリーンな処理を行っている、高度な処理技術を持っている証にもなり、会社のイメージ向上が期待できるでしょう。
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