2022年4月施行の「プラスチック資源循環促進法」とは?
2022/06/03
私たちの日常生活の至るところで活躍している「プラスチック」。丈夫で軽くて安く、ペットボトルをはじめ身の回りで、様々な用途で使われています。しかし、その便利さの一方で、プラスチックごみが与える環境への悪影響が問題視されています。
プラスチックごみに対する取り組みは、すでに世界各国で行われており、日本でも2020年の「レジ袋有料化」をはじめとした施策が始められています。2022年4月からは、プラスチックごみの削減とリサイクルの促進を目的とした「プラスチック資源循環促進法」が施行されました。
今回はこの「プラスチック資源循環促進法」がどういった法律なのか、4月からいったいどんな変化があったのかなどについて解説していきます。
プラスチック資源循環促進法とは?
プラスチック資源循環促進法は、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」を正式名称とします。「プラスチック新法」と称されることもあり、2021年6月に公布、2022年4月1日から施行となりました。
この新法は、プラスチック製品の設計から廃棄物の処理まで、プラスチックの商流全てにおける資源循環等の取組を促進するための法律です。プラスチックの資源循環を促進し、プラスチックごみを減らすことで持続可能な社会を実現することを目的としています。
海洋プラスチックごみ問題をはじめ、プラスチックが関係する地球環境問題に対応するため、日本は様々な国際的な約束をしています。こうしたなか、サーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行を推し進めるため3R+Renewableを原則としたプラスチック資源循環促進法が作られました。
★3R+Renewableとは?
Reduce(リデュース):製造のために消費する資源を減らす
Reuse(リユース):使用済みの製品を繰り返し使用する
Recycle(リサイクル):廃棄された製品を原材料等として利用する
Renewable(リニューアブル):製造に使用する資源を再生が容易なものに置き換え、廃棄を前提としないものづくりをすること
では、3R+Renewableによるプラスチック資源循環とは何か、ということについては環境省の特設サイトで、下記のように記載されています。
回避可能なプラスチックの使用は合理化(Reduce・Reuse)した上で、技術水準、安全性、機能性、経済的な状況等にも配慮しつつ、必要不可欠な使用については、より持続可能性が高まることを前提に再生可能性の観点から再生素材や再生可能資源(紙・バイオマスプラスチック等)に適切に切り替え(Renewable)、徹底したリサイクルを実施し(Recycle)、それが難しい場合には熱回収によるエネルギー利用を図ることで、プラスチックのライフサイクル全体を通じて資源循環を促進していきます。
まとめると、「基本的にプラスチックの不必要な使用はしないこと」「どうしても使わなくてはならない場合は、再生素材や再生可能資源などの再生できるものに切り替えること」「徹底したリサイクルの実施、難しい場合には熱回収によるエネルギー利用を図ること」で、一つのプラスチック製品のライフサイクル全体で資源をなるべく循環させていきたい、としています。そして、プラスチックのライフサイクル全体において関わりのある事業者、自治体、消費者が連携しながら資源循環に向けた取り組みを求めています。
プラスチック資源循環促進法の主な措置
プラスチックの資源循環の促進等を総合的かつ計画的に推進するため、プラスチック資源循環促進法では、次の5つの措置が定められています。
①環境配慮設計指針の策定
製造事業者等が努めるべき環境配慮設計に関する指針を策定し、指針に適合した製品であることを認定する仕組みを設ける。認定製品を国が率先して調達する(グリーン購入法上の配慮)とともに、リサイクル材の利用にあたっての設備への支援を行う。
②ワンウェイプラスチックの使用を合理化
ワンウェイプラスチックの提供事業者(小売・サービス事業者など)が取り組むべき判断基準を策定する。主務大臣の指導・助言、ワンウェイプラスチックを多く提供する事業者への勧告・公表・命令を措置する。
③市区町村による分別収集や再商品化を促進
プラスチック資源の分別収集を促進するため、容リ法ルートを活用した再商品化を可能にする。
市区町村と再商品化事業者が連携して行う再商品化計画を作成する。主務大臣が認定した場合に、市区町村による選別、梱包等を省略して再商品化事業者が実施することが可能に。
④製造・販売事業者等の自主回収を促進
製造・販売事業者等が製品等を自主回収・再資源化する計画を作成する。主務大臣が認定した場合に、認定事業者は廃棄物処理法の業許可が不要に。
⑤排出事業者に対する排出抑制や再資源化を促進
排出事業者が排出抑制や再資源化等の取り組むべき判断基準を策定する。主務大臣の指導・助言、プラスチックを多く排出する事業者への勧告・公表・命令を措置する。
排出事業者等が再資源化計画を策定する。主務大臣が認定した場合に、認定事業者は廃棄物処理法の業許可が不要に。
事業者に求められる行動とは?
ここでは、事業者に求められる行動について詳しく解説していきます。
■プラスチック使用製品設計指針と認定制度
プラスチック使用製品設計指針には、プラスチック使用製品の設計に当たり、製品を減量化して使用する材料を少なくすることや、大きさや形状を見直して収集・運搬を容易化したり、バイオプラスチックやプラスチック以外の材料の利用を検討するなど、プラスチック使用製品の製造事業者等が取り組むべき事項や配慮すべき事項が記載されています。
また、指針に則した製品の設計のうち、特に優れた設計を国が認定する制度が創設されました。認定を受けた設計に基づき製造されたプラスチック使用製品(認定プラスチック使用製品)は、国からグリーン購入法上の配慮やリサイクル設備の支援を受けることができます。
■ 特定プラスチック使用製品の使用の合理化
特定プラスチック使用製品とは、国が定めた以下の12品目のことを指します。この12品目を提供する事業者は、「特定プラスチック使用製品」の廃棄物の排出抑制の取り組みや、排出抑制に向けた消費者への情報提供が求められます。必要に応じて、国から指導及び助言を受けることもあります。
また、前年度に提供した特定プラスチック使用製品の量が5t以上である事業者は「特定プラスチック使用製品多量提供事業者」と呼ばれます。該当事業者の取り組みが著しく不十分な場合は、国から勧告・公表・命令をすることがあります。命令にも違反した場合は、50万円以下の罰金となる場合も。
特定プラスチック使用製品の使用合理化に向けた具体的な取り組みとしては、「木製スプーンや紙ストローを提供する」「スプーンやフォークを有償で提供する」「テイクアウトの飲料の蓋をストローが不要な飲み口機能付きに変更する」などがあります。
特定プラスチック使用製品12品目
- フォーク
- スプーン
- ナイフ
- マドラー
- ストロー
- ヘアブラシ
- くし
- カミソリ
- シャワー用キャップ
- 歯ブラシ
- ハンガー
- 衣類用カバー
特定プラスチック使用製品多量提供事業者
前年度に提供した特定プラスチック使用製品の量が5トン以上の、以下の事業者
- 小売業(スーパー・コンビニ・百貨店など)
- 宿泊業(旅館・ホテルなど)
- 飲食店(カフェ・レストラン・居酒屋など)
- 持ち帰り・配達飲食サービス業(フードデリバリーのサービスなど)
- 洗濯業(ランドリーなど)
■製造・販売事業者等による自主回収・再資源化
プラスチック使用製品の製造、販売または提供事業者が、自治体や消費者と協力して積極的に自主回収・再資源化に取り組むことが期待されています。
製造・販売事業者等が「自主回収・再資源化事業計画」を作成し、国の認定を受けた場合に限り、廃棄物処理法にもとづく許可がなくても、使用済プラスチック使用製品の自主回収・再資源化事業を行うことができます。ただし、この取り組みは義務ではなく任意の制度です。
■排出事業者による排出の抑制・再資源化
排出事業者とは、事務所、工場、店舗など、事業活動を行う上でプラスチックを排出する事業者のことを指します。すでに事業活動に伴い生じるプラスチック廃棄物を適正に処理する責任がありますが、加えてプラスチック使用製品産業廃棄物などの排出の抑制・再資源化等が求められています。
具体的には、プラスチック使用製品の製造、加工又は修理の過程において、原材料の使用の合理化を行うことで排出の抑制を促進するなどが挙げられます。そのほか、流通又は販売の過程において使用するプラスチック製の包装材において、簡素な包装を推進したり、プラスチックに代替する素材を使用すること等の取り組みがあります。
なお、前年度におけるプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量が250t以上である排出事業者=「多量排出事業者」は、プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制・再資源化等に関する目標を定め、目標を達成するための取り組みを計画的に行うことが求められます。取り組みが著しく不十分な場合には勧告・公表・命令の対象になる場合があります。
いかがでしたでしょうか?
プラスチックは私たちの生活を便利に豊かにする素材である一方、海洋汚染など様々な環境問題の原因でもあります。2022年4月施行のプラスチック資源循環促進法は、プラスチックを規制するための法律ではなく、資源として循環させる取り組みを促進させるための法律。
この法律の施行により事業者、自治体には様々なことが求められます。多くの企業はさまざまな対応に迫られることになるかもしれませんが、ビジネスチャンスの可能性もあります。
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(参考サイト)プラスチック資源循環
(参考サイト)環境省|プラスチック資源循環法関連