フランスのごみ処理やリサイクルの現状は?
2022/05/11
温暖化や、海洋プラスチックごみ問題など、私たちの暮らす地球は様々な環境問題を抱えています。その対策に各国、企業も乗り出しており、関連したニュースもよく話題となっています。レジ袋の有料化など、私たちの日常に直結するものもあり、誰にとっても環境問題は身近なものになっていると言えるでしょう。そうした中で、「サーキュラーエコノミー」という言葉が登場しています。
サーキュラーエコノミー(Circular Economy)とは、「循環型経済」という経済活動モデルのこと。
循環経済(サーキュラーエコノミー)とは、従来の3Rの取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動であり、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等を目指すものです。
欧州をはじめ世界各国でサーキュラーエコノミーへの転換が推進されており、フランスでは2020年2月にサーキュラーエコノミー促進のための法律が公布・施行されています。世界に先駆けてサーキュラーエコノミーに取り組んでいるフランス。
今回はそんなフランスでのごみの処理の現状、リサイクル・脱プラに対する取り組みについてみていきます。
フランスのごみ処理の現状
環境連帯移行省(Ministère de la Transition écologique et solidaire)のサイトによれば、フランスで毎年発生している廃棄物の総量(産業廃棄物・家庭ごみを含む)は3億2600万トンとのこと。
OECD(経済開発協力機構)が公表している都市廃棄物のデータでは、フランスの2020年の年廃棄物量は36,154千トンで、加盟国の中ではドイツ(52,567千トン)に次ぐ量となりました。
フランスでは、日本と同様に廃棄物を排出者によって分類されています。家庭から排出される「家庭ごみ( déchets ménagers)」と家庭以外から排出される「経済活動によって生じた廃棄物=産業廃棄物(déchets d’activités économiques(DAE))」の大きく2つ。
家庭ごみの集と処理については、「公共廃棄物管理事業」の一環として、地方自治体の責任で行われています。これはNOTRe法(nouvelle organisation territoriale de la République)によって定められ、独自の課税権限も委ねられており回収頻度などは地域によって異なります。なお、経済活動から出る廃棄物は、公共廃棄物管理事業の対象外で、自らの責任で廃棄物の管理を行います。
フランスおよびEUでの廃棄物処理方法は「リサイクル」「焼却(エネルギーリカバリー)」「焼却(エネルギーリカバリー以外)」「埋戻(リカバリー)」「埋立」があります。 なお廃棄物管理の優先順位は、EU廃棄物枠組み指令において、①発生防止(Prevention)、②リユース前処理(Preparing for re-use)、③リサイクル、④エネルギー回収などリサイクル以外のリカバリー、⑤ディスポーザルと定められています。フランスでは、リサイクルが半数以上を占めているようです。
ただ、2020年2月10日に交付された、サーキュラー・エコノミーを促進するための法律「循環経済法(Loi du 10 février 2020 relative à la lutte contre le gaspillage et à l'économie circulaire)」によって、衣類、靴、化粧品、本、家電などにおける売れ残り製品の焼却・埋立は原則禁止となりました。
上記の法律は、廃棄物を削減し、天然資源、生物多様性、気候を保護するため、下の5つの目的に基づき構成されています。製品の保証期間延長の義務化や、家電製品に対する修理可能性指数の実装など、製品への具体的な規制や義務化について規定されています。
1.使い捨てプラスチック製品の廃止
2.消費者への情報開示の強化
3.廃棄物削減対策の強化
4.計画的陳腐化への対抗措置
5.生産者責任の拡大
フランスのリサイクルの現状
上記の通り、フランスでは多くの廃棄物がリサイクル処理されていますが、そのリサイクル率は他の欧州の国と比較すると遅れをとっていると言われています。
容器包装のリサイクル管理を行う非営利団体のシテオ(CITEO)によると、フランスにおける2019年の容器包装のリサイクル率は70%(前年比2ポイント増)でした。なおリサイクル率は素材により大きく異なっており、スチール(100%)、ガラス(85%)、テトラパックの紙容器(57%)、テトラパック以外の紙容器(70%)、新聞紙などグラフィック用紙(57%)、アルミニウム(48%)、プラスチック(29%)となっています。
上述の循環経済法でも、リサイクルについての記載があり、2025年1月1日までにプラスチックのリサイクル率100%を目標とすることを規定されています。なお、EUが加盟国に義務付けているプラスチックボトルのリサイクル率の目標(2025年に77%、2029年に90%)に達しそうにないと、2023年に政府が判断した場合、デポジット制度を導入するとのこと。
※デポジット制度についてはこちらの記事で紹介しています。→【オクトーバーフェストで採用されている「デポジット制」とは?】
2022年1月からは、売れ残った衣料品の廃棄が禁止される法律が施行。サーキュラー・エコノミーを促進するための法律の一環で、売れ残った衣料品は寄付やリサイクルが義務づけられました。違反した場合は最大15,000ユーロ(約190万円)の罰金が科されることに。
EUでは、生産者が製品の廃棄やリサイクルまで責任を負う「拡大生産者責任(EPR)」の考え方にもとづき、包装廃棄物に関するEPR法が存在しています。しかし、繊維廃棄物に対するリサイクル義務を導入したのは欧州ではフランスが初めてのこととなりました。
衣類については、一般家庭にも状態が良いものは寄付か、売却、もしくはリサイクルをお願いしています。状態の悪いものを一緒に回収に出すことができ、回収されたものは状態に応じ、古着屋原材料として生まれ変わります。
フランスでの”脱プラ”に向けた動き
フランスの1人当たりプラスチック包装の消費量(2018年)は、35キログラムでした(欧州平均は33キログラム)。年間約240万トンのプラスチック包装材が市場に投入されています。家庭用と商業用はおそよ半数ずつとなっています。
世界各国で行われている「プラスチックごみ」の排出量削減の取り組み。日本でも2020年7月にレジ袋の有料化が義務付けられました。
フランスでは、他国に先駆けて2016年1月に使い捨てプラスチック製レジ袋の使用を禁止しています。そして、2020年2月に制定された「循環経済法」では、使い捨てプラスチック製品からの脱却を推進させる目標と方針が打ち出されました。2021年より段階的に「すべてのプラスチック包装の段階的廃止」に向けた設定が公表されています。
2021年
- ストロー、使い捨てカトラリー、マドラーおよび、ファーストフード店で利用されるポリスチレン容器を規制
- 企業におけるペットボトル飲料の無料配布の禁止
2022年
- 1.5kg未満の果物と野菜のプラスチック包装の禁止
- 公共施設に対する給水機設置の義務化
2023年
- ファーストフード店での使い捨て食器の禁止
2025年
- 再生プラスチック利用100%の達成
2030年
- 住民1人当たりの家庭廃棄物を15%、経済活動による廃棄物を5%削減
2040年
- 使い捨てプラスチック容器・包装の販売停止
2022年4月には、使い捨てプラスチック包装の3Rに関する国家戦略を採択する政令が公布。行動計画では、以下の10項目の軸となる具体的な行動計画を、スケジュールを明記しつつ策定されています。
①不要・過剰包装の削減
②リユースへの支援
③代替ソリューションの開発
④上市される包装材のリサイクル性の確保
⑤回収量増加の加速
⑥分別、近代化、革新および適応
⑦リサイクル能力の確保および再生材の導入促進
⑧その他横断的な活動
⑨業種別ロードマップ
⑩戦略のガバナンス・フォロー、評価
いかがでしたでしょうか?
今回はフランスのごみやリサイクルについて見てきました。
現在、日本含む世界各国で環境問題を改善・解決するための対策が講じられており、そうした中で「サーキュラーエコノミー」という考え方が登場しました。限りある資源を有効活用し、廃棄物を削減するために重要な「サーキュラーエコノミー」は、今後さらに注目されていくことでしょう。
そして、世界に先駆けてサーキュラーエコノミーを促進させる目的とした法律を打ち出したフランスでは、廃棄物削減や脱プラに向けた様々な規制や義務化が始められています。サーキュラーエコノミーに対するフランス国民の意識は高いとも言われています。
フランスのこうした政策や考え方は、日本国内でのサスティナビリティ規制やガイドラインに影響を与えるかもしれません今後もフランスにおける廃棄物および環境に対する施策は、注目していきたいところです。
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