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人口1位の中国、抱えるごみ問題や現状は?

コラム

人口1位の中国、抱えるごみ問題や現状は?

2022/01/21
世界の人口ランキング第1位の中国では、14億人もの人が暮らしています。中国は急速な近代化と工業化が目覚ましい一方で、大量の廃棄物が排出されており、その処理方法および環境問題が課題となっています。実際、廃棄物の埋め立て場は、予定よりも早く満杯になってしまったり、他国と比較してもずば抜けた量の家庭ごみが発生していると言われています。

中国政府は環境汚染や健康被害などを防ぐための法整備等を進めており、2021年1月1日より海外からの固体廃棄物の全ての輸入、中国内での放置、処理を禁止するとしました。そのほか、ごみに関する体制整備が行われるなどの動きが中国各地でも見られています。

今回は、そんな中国における、ごみ処理の現状やごみにまつわる施策・取り組みについてです。



中国におけるごみ処理の現状

中国の都市廃棄物排出量は2017年のデータでは215,209千トンで、GLOBAL NOTEが掲載している2019年の世界の都市廃棄物(ゴミ)排出量 国別ランキングで2位の位置付けにいます。(※ランキング表示では当年のデータが無い場合、過去のデータで補完表示)

中国都市建設統計年鑑によると、2018年の生活ごみの排出量は2億2,801万トンで、前年よりも約5.6%の増加が見られました。中国では人口の急激な増加、急速な経済発展に伴なって、生活ごみの排出量も2010年以降右肩上がりに増えています。

中国ではごみの処理方法としては、埋め立て処理が主流でしたが、焼却処理に切り替える都市が増えています。しかし、中国のごみ処理技術はまだ低いといわれており、未だに廃棄物を無害化する処理施設の数で見ると、埋め立て処理の施設が大半以上を占めています(出典:中国都市建設統計年鑑)。

中国でのごみ処理の焼却率が低い理由として、ごみの分別がされていなかったことが挙げられます。上海市などでごみ分別の取り組みがなされるものの、どれも継続せずに失敗に終わった過去があります。そこで中国では、2017年3月に「生活ごみ分別制度実施計画」、北京市や上海市など46重点都市において、2020年までに生活ごみの「強制分別」することが公表されました。これは、分別の罰則付き義務化を先行的に実施することであり、2019年7月には上海市において生活ごみ管理条例が施行し、「強制分別」が実施されることになりました。

同条例では、生活ごみを「リサイクル資源」(缶、瓶、衣類、プラスチックなど)「有害ごみ」(電池、蛍光灯など)「湿ったごみ(湿ごみ)」(生ごみなど)「乾いたごみ」(汚れた紙屑、おむつなど、その他のごみ)の4種類に分類し、分別回収することしています。「決められた時間に決められた場所に」ごみを出すことを求めており、監視員・監視カメラの設置、捨てる際は部屋番号を入力など、セキュリティの強化がされました。そして、本条例に違反した個人には最高200元(約3100円)、事業者には最高5万元(約78万円)の罰金を科し、宿泊事業者などは使い捨ての日用品、飲食サービス提供企業などは使い捨ての食器を、それぞれ進んで提供した場合、最高で5千元(約8万円)の罰金を科すこととされています。上海市は一般市民向けにごみの分類を検索できるサイトを開設し、条例実施から1年間でごみの分別回収が定着しつつあることが生活ごみの排出量から見て取れました。

中国においてはごみの分別は、制度はあっても実際に有効になされているとは言い難い状況でしたが、本条例によって実績が見られました。今後、上海および他都市でのごみ分別の変化がどのように見られるか注目されていくことでしょう。


★中国の廃棄物に関わる法律
中国では、廃棄物全般に関する基本法として、下記の3つの法律が制定されています。

【固形廃棄物汚染環境防治法】
1995年に制定。工業廃棄物、生活ごみ、及び危険廃棄物の処理に関する規則を定めており、2020年の改正により、固形廃棄物汚染防止における減量化、資源化、無害化という原則が明確化。

【清潔生産促進法】
2002年に制定、企業に対して、汚染物質の排出が少ない生産プロセスの採用とともに、生産プロセスにおいて回収、リサイクル、リユースしやすい製品の生産を求めており、使用後の包装の回収も義務付けている。

【循環経済促進法】
2008年に制定された法律。廃棄物リサイクルに関する拡大生産者責任を規定しており、工業廃棄物の総合利用、リユースと再生資源のリサイクルなどについて規定している。

※上記の基本法の下で、特に発生量の増大が見込まれ、かつリサイクルによって得られる経済利益の大きな自動車廃棄物や電子廃棄物については、個別のリサイクル規制が進んでいます。



プラスチックごみに関する政策

日本でも「レジ袋有料化」があったように、プラスチックごみ削減の動きが世界各国、また各企業でも見られています。そして、それは中国も同様です。

中国政府は2017年に「海外ごみ入境禁止 固体廃棄物輸入管理制度改革実施計画」を定め、2017年末までに環境への害が大きく、プラスチックなどの固体廃棄物の輸入を禁止するなどとしました。従来、中国に廃プラスチックを輸出してきた国にとっては大きく影響が出る施策ですが、中国の一部企業が東南アジア、日本、韓国、欧米などの国に工場を投資、中国の廃プラスチックの回収処理の経験と技術が各国に持ち込まれました。中国はこれまで世界からの輸入廃プラスチックを大量に処理してきた一方で、他国に廃プラスチックを輸出したことがなく、本土における処理率は100%と、廃プラスチック汚染対策に大きく貢献してきた実績があります。

2021年には、2025年までにプラスチックごみを削減するための目標が明記されたほか、生産、流通、消費など各段階におけるプラスチック製品の管理を強化する取り組みが盛り込まれた「プラスチック汚染改善行動計画」が発表されました。小売り、電子商取引、飲食、宅配、ホテルなどの重点分野において、使い捨てプラスチック製品使用の減少を求めており、そのほか、配送商品の二次包装の禁止し、再生可能製品の利用向上を目指すとされています。

また、同計画では、プラスチック代替品の着実な普及、プラスチックごみ回収のルール化、無害化処理能力の向上、リサイクルの強化などの内容が盛り込まれています。中国は近年、年間1900万トン近くの各種プラスチックを回収・利用してきましたが、廃プラスチックの「処理」に関しては効率化が促進されている一方で、回収工程では効率的な回収が行われていません。今後、さらなる強化が求められます。



いかがでしたでしょうか?
今回は人口最大の国、中国のごみにまつわる現状を見てきました。急速な経済発展により人口とともに廃棄物の排出量も増加している中国。様々な廃棄物および環境に関する法整備や各地での取り組みが見られています。日本は以前中国にプラスチックごみを輸出していたこともあり、中国での廃棄物に関する法整備は、他人事ではないと言えるでしょう。同じアジア圏で、ほど近い国であるということからも、中国での廃棄物の取り組みやその現状には注目していきたいところです。



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