処理が難しいごみ、「処理困難物」とは?
2022/01/19
日常生活を送り、事業活動を営む上で廃棄物の排出は免れないものです。私たちが排出したごみは基本的に、自治体や廃棄物業者によって回収・処理され、再生利用や焼却・埋め立て処分などそれぞれ適正に処理されるものです。
しかし、排出される廃棄物の中には、設備や技術、危険性などの観点から処理が困難なごみもあります。では、処理が難しい廃棄物はどのような対応をされているのでしょうか?
今回は廃棄物の中でも処理が困難である「処理困難物」について着目します。
処理困難物とは?
家庭や事業所などから排出される廃棄物は多種多様で、なかには大きすぎて運搬や破砕しにくいものや、処分の過程で引火や感染、有害物質の発生などの危険を伴うものもあります。家庭から排出される一般廃棄物は原則、市町村の責任で処理が行われることとなっています。しかし、技術や設備等の面から市町村で適正に処理を行うことが困難な廃棄物は「適正処理困難物」と言い、処理困難物と簡単にいう場合もあります。なお、「適正処理困難物」は通常、一般廃棄物についてのみ使用されます。
処理困難物の一例 ※長野市
・家電4品目 テレビ・エアコン・冷蔵庫(冷凍庫)・洗濯機(衣類乾燥機)
・パソコン
・消火器
・二輪車(バイク、スクーター、原動機付き自転車)
・ガソリン、軽油、灯油、オイル(非食用)
・塗料、シンナー
・自動車、発電機、エンジン、バッテリー、除雪機、農業機械
・プロパンガスボンベ
・塩化カルシウム
・農薬、火薬、毒劇物
・ピアノ
・石、砂、土
「処理困難物」は上記以外の場合でも、「処理が困難な廃棄物」を指す言葉としても用いられます。その危険性や環境保護等のために処理に関して法律で定められていたり、政府から手引き等が出されている種類もあります。下記ではそうした処理困難物とされる廃棄物の一部について、その概要と処理の手法などをご紹介します。
水銀
2013年10月、水銀及び水銀化合物の人為的な排出から人の健康及び環境を保護することを目的に、「水銀に関する水俣条約」が採択されました。水俣条約は、水銀の供給、使用、排出、廃棄等の各段階で総合的な対策に世界的に取り組み、水銀の人為的な排出を削減し、地球的規模の水銀汚染の防止を目指す内容となっています。
この水俣条約を踏まえ、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」が改正、廃水銀等の処分基準、水銀使用製品産業廃棄物及び水銀含有ばいじん等の処理基準等が追加されました。また、平成31年に水銀使用製品産業廃棄物の種類が追加され、銀廃棄物を保管又は処理委託する場合には以下のような対応が必要です。
廃水銀等
以下が廃水銀等の対象となり、排出する場合は、通常の特別管理産業廃棄物の措置に加え、下記の措置が必要です。
①特定施設において生じた廃水銀又は廃水銀化合物(水銀使用製品に封入されたものを除く)
②水銀若しくは水銀化合物が含まれている物(一般廃棄物を除く。)又は水銀使用製品が産業廃棄物となったものから回収した廃水銀
【保管】
・飛散、流出又は揮発の防止のための措置をとる
・高温にさらされないための措置をとる
・腐食防止措置をとる
【処理の委託】
・「廃水銀等」の収集運搬又は処分の許可を受けた者に委託
【委託契約書】
・委託する産業廃棄物の種類に「廃水銀等」と記載
【マニフェスト】
・産業廃棄物の種類欄に「廃水銀等」と記載
水銀含有ばいじん等
「水銀含有ばいじん等」が水銀又はその化合物に汚染されたものが廃棄物となったもの。水銀を一定以上含む水銀含有ばいじん等は、その処分・再生時に水銀回収が義務付けられています。排出する場合は、通常の産業廃棄物の措置に加え、次の措置が必要です。
【処理の委託】
・「水銀含有ばいじん等」の収集運搬又は処分の許可を受けた者に委託
・水銀回収が義務付けられているものの処理を委託する場合は、水銀回収が可能な業者に委託
【委託契約書】
・委託する産業廃棄物の種類に「水銀含有ばいじん等」が含まれることを明記
【マニフェスト】
・産業廃棄物の種類欄に「水銀含有ばいじん等」と記載すること、また、その数量を記載
【産業廃物保管場所の掲示板】
産業廃棄物の種類欄に「水銀含有ばいじん等」が含まれることを明記
産業廃棄物の種類欄に「水銀含有ばいじん等」が含まれることを明記
水銀使用製品産業廃棄物
水銀使用製品産業廃棄物は水銀を使用した製品が産業廃棄物となったもので、排出する場合は、通常の産業廃棄物の措置に加え、次の措置が必要です。
【保管】
・他の物と混合するおそれのないように仕切りを設ける等の措置をとる
【処理の委託】
・「水銀使用製品産業廃棄物」の収集運搬又は処分の許可を受けた者に委託
・水銀回収が義務付けられているものの処理を委託する場合は、水銀回収が可能な業者に委託
【委託契約書】
・委託する産業廃棄物の種類に「水銀使用製品産業廃棄物」が含まれることを明記
【マニフェスト】
・産業廃棄物の種類欄に「水銀使用製品産業廃棄物」と記載すること、また、その数量を記載
【産業廃棄物保管場所の掲示板】
・産業廃棄物の種類欄に「水銀使用製品産業廃棄物」が含まれることを明記
フロン
フロン類は、不燃性、化学的に安定、人体に毒性が小さいといった特徴を持つものが多く、エアコンや冷蔵庫をはじめ、断熱材等の発泡剤、半導体や精密部品の洗浄剤、エアゾールなど、様々な用途に活用されてきました。しかし一方で、フロン類のうちオゾン層を破壊する効果を有している「特定フロン」と呼ばれるものがあります。また、「代替フロン」はオゾン層は破壊しないものの、特定フロンと同様に強い温室効果を有しています。
オゾン層を守り、地球温暖化を防止するには、各種冷凍空調機器からフロンを適切に回収することが必要となります。令和元年には、機器廃棄時のフロン類の回収率向上のため、引渡義務違反にかかる直接罰や廃棄物・リサイクル業者等が機器を引き取る際にフロン回収を確認できない場合の引取り禁止等を追加する法改正が行われるなど、フロンの回収や廃棄等に関する法整備がされています。
フロン機器の廃棄方法は以下の2つ。
①「第一種フロン類充填回収業者(都道府県知事の登録業者)」にフロン類のみを回収してもらいます。フロン回収後、機器は残されるため、別途廃棄物処理業者やリサイクル業者に引き渡す必要があります。
②「第一種フロン類引渡受託者(取次業者とも呼ばれる)」に機器ごと引き渡し。解体業者や廃棄物処分業者、設備業者、リサイクル業者等などに、機器とフロンの回収をまとめてお任せする方法です。
なお、フロン機器の廃棄時には以下の書類を交付します。上記のどちらの方法を取るかによって、書面の名称が異なりますが、記載内容と交付の流れはほぼ同じです。第一種フロン類充填回収業者に依頼する場合は、「回収依頼書」を交付。第一種フロン類引渡受託者(取次業者)に依頼する場合は「委託確認書」を交付します。引渡受託者が複数者の場合にのみ、「再委託承諾書」が必要になります。
いかがでしたでしょうか?
今回は処理困難物についてここまで見てきました。
処理が難しい廃棄物の多くは、その危険性からによるものです。該当物を廃棄・処分する際は、処分方法等を正しく理解し、適正処分を心がけるようにしてください。適正に廃棄の対応をしなければ、廃棄物の種類によっては罰則が適用されることがあります。適正処分の方法が分からないという場合は、環境省等のサイトを確認したり、自治体や廃棄物処理業者等に相談することがオススメおすすめされます。
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(参考サイト)EICネット
(参考サイト)長野市|ごみ処理施設で処理ができないもの(処理困難物)
(参考サイト)環境省|水銀廃棄物関係
(参考サイト)環境省|フロン排出抑制法ポータルサイト