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産業廃棄物を処理するときの「委託基準」や契約書とは?

コラム

産業廃棄物を処理するときの「委託基準」や契約書とは?

2021/12/24
事業活動を営む上で、ごみの排出・処理の問題は免れません。事業者から排出されたごみは「事業系一般廃棄物」「産業廃棄物」に分類され、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」で、事業者自らの責任において適正に処理しなければならない、また自ら処理しなければならないとされています。

そのため、事業所から排出されるごみは家庭系一般廃棄物の集積所に出すことはできません。排出事業者は自らの力で産業廃棄物および事業系一般廃棄物を処理できない場合は、廃棄物処理業者などにその処理(運搬・処分)を委託する必要があります。産業廃棄物の処理を他人に委託する場合には、「委託基準」と呼ばれるものに遵守していなければなりません。

では、「委託基準」とは一体なんなのでしょうか?今回は委託基準を中心に、産業廃棄物の処理責任や処理委託の流れ、契約書の内容などについて解説していきます。


産業廃棄物の処理責任

上記で少し触れた「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」は、廃棄物の定義や処理責任の所在、処理方法、処理施設、処理業の基準などを定めています。この廃棄物処理法では、産業廃棄物の処理は排出事業者が処理責任を持ち、事業者自らが処理するか、または排出事業者の委託を受けた許可業者が処理することとされています。

排出事業者の責任は、他にも後述の「委託基準の遵守」や「管理票交付義務」などが規定されています。管理表とはマニフェストととも呼び、産業廃棄物の処理を他人に委託する場合には、産業廃棄物を引き渡す際に、産業廃棄物の名称、運搬業者名、処分業者名、取扱上の注意事項などを記載したマニフェストを交付し渡さなければなりません。マニフェストは、排出事業者が収集運搬業者、処分業者に委託した産業廃棄物の処理の流れを自ら把握し、不法投棄の防止等適正な処理を確保することを目的としています。そして、排出事業者は、マニフェストを使用し、委託した産業廃棄物が最終処分まで適正に処理されたかどうか確認する義務があります。

マニフェストについてはこちらの記事でも解説しています。



処理委託の流れ

それでは、産業廃棄物の処理を委託する場合、どういった流れになるのでしょうか。

まず、排出事業者は、産業廃棄物の処理を委託できる産業廃棄物処理業者を選定し、産業廃棄物処理委託契約を締結し、産業廃棄物処理委託契約書を作成します。

次は、産業廃棄物の引渡し段階です。排出事業者は、産業廃棄物処理業者に対し、マニフェストとともに、産業廃棄物を引き渡します。

排出事業者から産業廃棄物を受け取った産業廃棄物処理業者は、委託契約に基づき、適切な産業廃棄物の処理を進めます。そして、産業廃棄物の運搬や処分をそれぞれ完了させた段階で、排出事業者に対し、「処理済み」の記載をしたマニフェストを順次返送します。

産業廃棄物処理業者からマニフェストを返送を受けた排出事業者は、すぐにマニフェストの記載内容をチェックし、産業廃棄物委託契約書に記載した通りに処理されたか、期限内に返送されてきたかなどを、必ず確認します。

排出事業者のところに、最後のマニフェストE表が無事に返送されてくれば、排出事業者が委託した産業廃棄物の処理は、ひとまず終了ということになります。


委託基準とは

産業廃棄物処理業者に処理を委託する場合には、排出事業者は一定のルールに従って処理を委託しなければなりません。この排出事業者が守らなければならないルールを「委託基準」を呼び、廃棄物処理法によって定められています。

委託基準の具体的な内容としては、主に以下の4点です。

・委託先の選定

産業廃棄物の処理を委託するときは、適法な産業廃棄物処理業の許可を持った処理業者を選定し委託する必要があります。産業廃棄物処理業の許可を持っている業者の中でも、委託しようとしている廃棄物の処理を処理できる許可を持った業者でなければなりません。例えば、「木くず」の運搬を依頼する場合は、「木くず」の収集運搬許可を持っている産業廃棄物処理業者に運搬を委託します。


・委託契約書の締結・作成

排出事業者と処理業者の間で、産業廃棄物処理委託契約を締結し、委託契約書を作成する必要があります。
※こちらは後述で詳細を解説します。


・マニフェストの交付・運用

排出事業者は、実際に産業廃棄物の処理を委託する際には「マニフェスト」を発行し、産業廃棄物とマニフェストを一緒に引き渡します。マニフェストは、産業廃棄物の種類ごと、運搬先ごとに交付しなければなりません。


・産業廃棄物処理委託契約書とマニフェストの保存

産業廃棄物の処理が終了した後、産業廃棄物処理委託契約書は契約終了の日から。5年間保存しなければなりません。またマニフェストについても、産業廃棄物処理業者から返送されてきたときから5年間保存します。


委託基準が守られないと懲役刑や罰金刑に問われることもあります。排出事業者ではなく、委託した処理業者が不法投棄等を行った場合においても、排出事業者が原状回復の措置命令等の行政処分の対象となる場合があるため、委託先は慎重に選ぶ必要があります。


委託契約書の締結

通常の契約行為であれば、当事者間の意思の合致だけで成立し、契約書という書類があるかどうかは、契約の効力に関係がないとされています(諾成契約の原則)。しかし、排出事業者が産業廃棄物の処理を産業廃棄物処理業者に委託する際は、「委託契約書」を締結しなければなりません。

産業廃棄物処理委託契約書は、排出事業者と産業廃棄物処理業者との間で処理を委託したという事実の存在や、産業廃棄物の処理方法などを書面の形で明確にしておくために作成します。排出事業者の処理責任を果たすためにも、産業廃棄物の処理を依頼したという事実を書面で保存しておくようにしましょう。

排出事業者が、産業廃棄物の「収集運搬」と「中間処理」のそれぞれを処理業者に委託する場合は、
・収集運搬については、排出事業者と収集運搬業者
・中間処理については、排出事業者と中間処理業者
と2者間で別々に直接契約する必要があります。ただし、収集運搬と中間処理を同じ処理業者が行う場合は、1つの契約書のみで契約することができます。なお、中間処理した後の産業廃棄物の処分に関しては、中間処理業者と最終処分業者との処理委託契約となります。



委託契約書への記載内容

産業廃棄物処理の委託契約書に記載する事項は以下になります。なお、収集・運搬を委託する場合と、処分を委託する場合で、それぞれ記載すべき内容が異なります。

共通の契約内容
  • 法令の遵守
  • 委託内容
  • 適正処理に必要な情報の提供
  • 排出事業者と受託者の責任範囲
  • 再委託の禁止
  • 義務の譲渡等
  • 委託業務終了報告
  • 業務の一時停止
  • 報酬・消費税・支払い
  • 内容の変更
  • 機密保持
  • 契約の解除
  • 協議
  • 契約の有効期間

運搬委託契約書のみ記載が求められる項目
  • 運搬の最終目的地(氏名や住所、許可番号など)
  • 積替保管を行う場合、その所在地や保管上限

処分委託契約書のみ記載が求められる項目
  • 処分の場所、方法及び処理能力
  • 最終処分の場所、方法及び処理能力
  • 搬入業者の情報(氏名や住所、許可番号など)


まず、契約を交わす者が誰であるのかを明確にするため、排出事業者と、産業廃棄物処理業者の名称、処理業者が持っている許可の内容を契約書に記載します。そして、契約書の末尾に産業廃棄物処理業の許可証のコピーを添付することで、適切な処理業者への委託であると明らかにしておきます。

次に、木くずや廃油などの具体的な産業廃棄物の種類とその数量を記載し、何を委託するのかを明確にさせます。また、産業廃棄物を処理してもらう料金も、必ず委託契約書に記載します。その他、産業廃棄物を安全に処理するのに必要な情報提供の方法の明記、処理後に処理業者から排出事業者にその報告を行う方法を契約書で定めておきます。

収集運搬の委託契約の場合には、中間処理場や最終処分場などの、具体的な運搬先を記載しなければなりません。積替え・保管を行う場合は、その場所の所在地、保管できる産業廃棄物の種類や保管料の上限などを記載します。また、積替え保管場所において、安定型産業廃棄物(廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラスくず、コンクリートくずおよび陶磁器くず、がれきの5種類の産業廃棄物)と他の産業廃棄物とを混合させても良いかどうかを、契約書上で明らかにしておきます。中間処理や最終処分を委託する場合は、所在地、破砕や埋め立てなどの産業廃棄物の具体的な処理方法、処理施設の処理能力などを記します。



いかがでしたでしょうか?
今回は事業者が廃棄物を適切に処理するために遵守しなければならない「委託基準」を中心に見てきました。万が一、委託基準に違反してしまっていた場合、懲役刑や罰金刑などの罰則が適用されてしまいます。廃棄物は自らの責任のもと、適正に処理することが求められており、そのためには法令順守で安心のおける業者とお付き合いするようにしてください。

ただ、委託基準に適した委託事業者の選定など、ややこしく分かりづらいと思われる方もいるでしょう。事業所の廃棄物の現状把握やコンプライアンス強化をお考えで、「時間がない」「何から手を付ければいいかわからない」とお困りの方は、ぜひ当社までお問い合わせください。ごみ処理管理やマニフェスト・行政資料作成など、みなさまの廃棄物に関するお悩み解決をお手伝いいたします。

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(参考文献)尾上雅典 2018『最新 産廃処理の基本と仕組みがよ〜くわかる本』

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