事業者の「容器包装リサイクル法」の義務って?
2021/12/17
私たちが生活や事業活動を送る上で排出は欠かせない「ごみ」。ごみの排出、処分は世界的にも大きな課題とされ、その抑制や削減等について様々な取り組みがなされています。そして日本でも国や企業をあげて、ごみを少なくしようとする動きが多く見られています。
そんな「ごみ」にまつわる法律は日本だけでも複数あります。それらの多くは事業者に対して何かしらを義務付けています。事業者は事業活動の継続とともに、こうした法律を遵守し、CSRに取り組むことが求められています。
今回はごみに関わる法律の一つ「容器包装リサイクル法」の基本的な内容、そして企業・事業所の義務を解説していきます。
容器包装リサイクル法とは?
容器包装リサイクル法とは、簡単に言うと「容器包装ごみの減量化を図るための法律」です。正式には「容器包装に係る分別収集および再商品化の促進等に関する法律」と言い、家庭から出るごみの6割(容積比)を占める容器包装ごみを資源として有効活用することにより、廃棄物の減量化を図るための法律です。
容器包装リサイクル法は、1997年にガラス容器とペットボトルを対象に施行されました。2000年には全面施行され、飲料用以外の紙製容器包装とプラスチック製で飲料、醤油充てんのペットボトル容器以外が対象に加わりました。また、2006年に、改正容器包装リサイクル法が成立し、2007年4月から施行されています。
この法律は、従来は市町村のみに頼っていた容器包装廃棄物の処理を、消費者は分別排出、市町村は分別収集、事業者は再商品化を行うといった役割分担によって、容器包装廃棄物の削減を実現させることを目的としています。
家庭から一般廃棄物として排出される容器包装廃棄物のリサイクルを進めやすくするため、消費者は、住んでいる自治体のルールに従い分別排出するよう努めます。市町村は、消費者から出された容器包装廃棄物を分別収集し、容器包装廃棄物を再商品化事業者にそれを引き渡します。容器を製造、または容器包装を利用して商品の販売をした事業者は、容器包装の再商品化(リサイクル)を行います。事業者は、そのほかにも、容器包装の軽量化などにより容器包装廃棄物の排出抑制に努めます。なお、「特定事業者」とは、容器、包装を利用して中身を販売する事業者、容器を製造する事業者、容器および容器、包装がついた商品を輸入して販売する事業者のことを言います。
再商品化とは?
市町村により分別収集されたガラスびんやペットボトルなどを原材料や製品として他人に売れる状態にすること。再商品化を行う事業者が自ら製品の原材料として利用したり、そのまま製品として使用することも含まれます。
容器包装リサイクル法の対象商品
再商品化義務のある容器包装
・ガラス製容器
・ペットボトル(飲料・醤油・酒類)
・プラスチック製容器包装
・紙製容器包装(段ボール・紙パック以外)
※業務用に販売され、事業所等から排出されるものは法律の対象外です。
※スチール缶、アルミ缶、紙パック、段ボールの4品目は、市町村が分別収集した段階から有償で販売できるものですので、特定事業者に再商品化を行う義務はありません。
事業者の義務とは?
容器包装リサイクル法では、事業者の義務について以下のように定められています。
再商品化義務
容器包装リサイクル法において、次の事業者は特定事業者としてリサイクル(再商品化)義務を負います。
特定容器利用事業者…その事業において、その販売する商品について特定容器を用いる事業者(輸入業者を含む)
特定容器製造等事業者…特定容器の製造などの事業を行う事業者(輸入業者を含む)
特定包装利用事業者…その事業において、その販売する商品に特定包装(包装紙など)を用いる事業者(輸入業者を含む)
※ただし、国、地方公共団体、中小企業基本法第2条第5項に規定する小規模企業者のうち販売額が一定の額に満たないものはこの法律の適用を除外されます。
再商品化の義務があるかはこちらから確認できます。
特定事業者が再商品化の義務を果たすには、以下の3通りがあります。リサイクル(再商品化)の義務を負う特定事業者が、万一この義務を履行しない場合は、国による「指導、助言」、「勧告」、「公表」、「命令」を経て「罰則」が適用されます。
(1)指定法人への委託(指定法人ルート):指定法人に再商品化を委託
市町村が分別収集・保管した容器包装を、主務大臣が指定した指定法人公益財団法人日本容器包装リサイクル協会に委託料金を支払い、再商品化の代行を委託する方法です。再商品化義務を負う事業者のほとんどがこの方法を取っています。
義務履行の流れ
①容器包装帳簿をつけ、再商品化義務量を把握
②日本容器包装リサイクル協会に再商品化委託申し込みをし契約を結ぶ
※再商品化委託契約は1年間の単年度契約のため、毎年申し込みを行う必要があります。
③委託料(再商品化実施委託料と拠出委託料)の支払い
再商品化実施委託料(再商品化を再商品化事業者に委託する費用)
=再商品化義務量(kg)×実施委託単価(円/kg)
拠出委託料(品質の高い分別収集を行うなど、再商品化の合理化に貢献した市町村に支払われる「再商品化合理化拠出金」の原資となる費用)
=再商品化委託申込量(kg)×拠出委託単価(円/kg)
(2)認定を受けて行う再商品化(独自ルート):ルート全体を主務大臣が認定
一定の基準を満たし、主務大臣の認定を受けた特定事業者は、自らまたは直接再商品化事業者に委託して、再商品化を実施できます。
(3)自主回収:特定事業者が自ら、または委託により回収
一定の回収率(おおむね90%)に達するものとして、主務大臣の認定を受けた回収方法により回収される「容器」「包装」は、再商品化義務が免除されます(例:リターナブルのビールびんや牛乳びんなど)。認定を受けた事業者は、認定に係る回収の実施状況について主務大臣への報告しなければなりません。
帳簿の記載義務
特定事業者は帳簿を備え、販売商品に用いた容器や包装、あるいは製造・輸入した容器の量などについて記載し、閉鎖後5年間保存することが義務づけられています。帳簿は、再商品化義務量算出のもととなると同時に、義務履行の証明ともなるものです。
【帳簿の記載事項】※一部省略
1. リサイクル(再商品化)義務量
2. 義務量を算定する際に用いた排出見込量
3. 利用事業者/当該年度の特定容器包装の利用見込量
製造等事業者/当該年度の特定容器の販売見込量
4. 2.の排出見込量を自主算定した場合
(1)自ら回収または他者への委託により回収する特定容器包装で主務大臣が定めるところにより算出される量
(2)容器包装廃棄物として排出されない特定容器包装の量として主務大臣が定めるところにより算出される量
5. 2.の排出見込量を簡易算定した場合
(1)自ら回収または他者への委託により回収する特定容器包装で主務大臣が定めるところにより算出される量
6. 利用事業者/特定容器包装を用いた商品を輸出している場合
(1)特定容器包装の種類
(2)特定容器包装の量
(3)特定容器包装を用いた商品の輸出先
製造等事業者/特定容器を輸出している場合
(1)特定容器の種類
(2)特定容器の量
(3)特定容器の輸出先
7. 自主回収の認定を受けている場合
(1)認定を受けた特定容器の種類
(2)認定を受けた特定容器の量
(3)認定を受けた特定容器の回収方法
8. 自ら回収または他者への委託により回収する特定容器包装の量を算定した場合
特定容器包装の種類、回収方法
9. 指定法人とリサイクル(再商品化)契約を結ぶ場合の契約事項
識別表示義務
容器包装に関する「識別表示」とは、資源有効利用促進法に基づいて指定表示製品と定められた容器包装に、プラスチック、紙、PET、スチール、アルミなどの材質を表示することをいいます。「識別マーク」とは、識別表示をするために定められた様式に基づいたマークを意味します。
識別表示の義務対象となる容器包装
次の容器には識別表示が義務化されています。
・プラスチック製容器包装(飲料・酒類・特定調味料用のPETボトルを除く)
・紙製容器包装(飲料用紙パックでアルミ不使用のものおよび段ボール製容器包装を除く)
・PETボトル(飲料・酒類・特定調味料用のPETボトル)
・飲料・酒類用スチール缶
・飲料・酒類用アルミ缶
義務を果たさないと…?
法律で定められた義務を果たさなければ、企業名の公表、また以下の罰金が科されます。
再商品化義務を履行しなかった場合…100万円以下の罰金
帳簿の記載をしない、虚偽の記載をする、帳簿の保存をしない場合…20万円以下の罰金
報告を求められた時、報告しなかったり、虚偽の報告をした場合…20万円以下の罰金
立入検査を求められた時、拒んだり、妨げたり、または忌避した場合…20万円以下の罰金
いかがでしたでしょうか?
今回は容器包装リサイクル法と事業者の義務についてみてきました。再商品化義務違反があると知りながら申告しないことが法律違反となることはもちろん、取引先の義務違反を知りつつ黙認したりすることもコンプライアンス違反にあたります。
コンプライアンスの徹底は消費者や他社からの信頼を着実に築き、また良い人材が集まって来ることで、企業のブランド力を高めることができます。現代は、消費者はもちろん企業で働く労働者も、企業の誠実さ、公正さを評価する時代です。企業の信頼を守るためにも、容器包装リサイクル法の再商品化義務を果たすことが求められているのです。
とはいえ、法令遵守のために義務を果たそうにも、複雑な部分や分かりづらい点が多いと感じることもあるでしょう。容器包装リサイクル法の再商品化義務や帳簿の記載義務等について不明点や不安なことがあれば、ぜひエコ・ブレインまでご相談ください!
長年ごみ問題の解決に携わってきた専門のスタッフが、皆様のお悩みを解決までサポートいたします。容器包装リサイクル法をはじめとした、廃棄物にまつわる法律についてすこしでもご不明な点がございましたら、分かりやすいご説明、的確なアドバイスとサポートをさせていただきます。
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(参考サイト)経済産業|事業者 - 3R政策(METI/経済産業省)
(参考サイト)農林水産省|容器包装リサイクルの手引き
(参考サイト)日本容器包装リサイクル協会
(参考文献)尾上雅典 2018『最新 産廃処理の基本と仕組みがよ〜くわかる本』