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古紙の価格が上昇、その背景にはコロナ禍が?

コラム

古紙の価格が上昇、その背景にはコロナ禍が?

2021/12/01
デジタル化およびペーパーレス化が進んでいるとはいえ、私たちの身の回りには段ボールやコピー用紙、その他紙類などがあふれています。使い終わった紙類は処分してしまう、という方も少なくはないでしょう。しかし、これらは製紙原料となる貴重な資源であり、循環型社会の形成に必要不可欠な要素の一つでもあるのです。

この古紙をめぐる状況に、ここ最近大きな動きが出ています。2021年5月に段ボールの原料となる、古紙の国内価格が約2年半ぶりに上昇しました。コロナ禍で古紙の回収が思うように伸びない一方、通販市場の拡大などを背景に国内外で段ボールの需要が高じています。結果、国内の問屋在庫が減少、アジアの製紙会社による日本産の段ボール古紙の引き合いも多く、輸出価格も上昇することにつながりました。

古紙問屋が回収事業者から仕入れる段ボール古紙の買値は、1キロ5~7円(10月21日時点、日経市況「古紙数値表」)。価格が上昇したのは2018年11月以来。国内での古紙価格が下落していく一方だった中での、久々の価格上昇となりました。

今回は古紙をめぐる環境や古紙リサイクルの意義について見ていきます。



古紙をめぐる近況

2018年の米中による貿易戦争、最大生産国である中国が段ボールの原料となる古紙の調達先を米国から日本に変え、爆買いを行いました。その結果、日本での古紙流通量が減り、一部で欠品も出るなどの状況となりました。しかし2019年、環境規制を強める中国が廃棄物輸入ゼロを掲げて輸入を制限し、行き場を失った古紙が日本国内にあふれることに。さらに2020年には中国では古紙の全面輸入禁止となり、その影響を受け古紙の需給にだぶつきが生じました。

こうした様々な動きを受け、2019年頃から古紙価格は下落し、以降低迷状態が長期化しました。2020年初頭には採算の悪化で古紙回収が一時止まったり、引き取り業者が撤退したりする自治体も。古紙は回収率が8割を超え「リサイクルの優等生」と言われてきましたが、回収網の維持が難しいという状況となりました。春以降は、コロナ禍による古紙の発生量減少と東南アジア向け輸出の拡大により、余剰在庫が徐々に減少。古紙価格はほぼ横ばいの状況で推移していました。

2021年現在も古紙在庫は低水準が続いています。指標となる関東製紙原料直納商工組合の10月末在庫(32社分)は、段ボール・新聞・雑誌の3品合計で前年同月末比16.6%減の2万4556トン。主力の段ボール古紙の仕入れは新型コロナ禍による回収の減少などが響き、前年同月末に比べ3.7%減少となりました。こうしたことから、5月には段ボール古紙の国内価格が上昇、8月には一段と上昇しました。昨年の底値からの上昇率は3割に達し、約2年ぶりの高値となりました。


コロナ禍の影響が大きい

国内の古紙市況に大きな動きをもたらしたのは、新型コロナウイルス。新型コロナ感染症の拡大は、様々な分野・業界にも影響を及ぼし、私たちの生活にも大きな変化を与えました。コロナ禍で外出自粛の動きが高まると、消費活動はインターネット通販にシフトし、通販向けの段ボールの需要が高まっています。併せて段ボールの原料となる古紙についても、旺盛的な需要が続いています。しかし、テレワーク化によるオフィスへの出勤低下や新聞折り込みの減少等の影響で、雑誌と新聞に関しては需要、供給共に大幅な減少傾向を余儀なくされています。

通販の輸送に使う段ボールの原料需要が堅調な一方、天候不順に伴う野菜輸送の鈍化や半導体不足による自動車生産の停滞もあり古紙の発生が少なくなっています。ニーズが高いままであるのに、在庫の減少は続いており、古紙価格の上昇につながっています。古紙価格などの原材料や生産コストが上昇に対応し、段ボール原紙を値上げする企業も現れました。

引越や宅配では、脱段ボールの動きもあり、段ボールを使わない配達も見られています。段ボールは95%以上がリサイクルされていますが、今後もゴミ削減など環境に配慮した技術革新、そして古紙を排出する私たち一人一人もリサイクルの意識をさらに高めることが求められるでしょう。



古紙をリサイクルする意義

紙の原料は元をたどれば全て木材。不要になった紙をごみと安易に処分することは、貴重な森林資源の浪費につながります。つまり、古紙は国内で発生する貴重な資源であり、製紙原料の安定確保のために古紙のリサイクルは重要な位置付けにあるのです。

紙にはいくつかの種類があり、例えば、新聞、段ボール、雑誌、雑がみ、飲料用パックなど普段から私たちの周りに多種多様な紙が存在しています。これらの古紙をリサイクルするために、種類ごとに分別して排出することが大切です。古紙はその品質や特徴に応じて、それぞれ異なる紙の原料に使われています。雑誌は菓子箱や書籍、段ボール箱を作る原料とされていたり、新聞はコピー用紙や新聞用紙の原料となっています。そして、孤児を種類ごとに分別するほか、緩衝材や臭いのついた紙など「禁忌品」と呼ばれるものを混ぜないようにすることも重要です。禁忌品が混ざると生産工程での機械トラブルや不良品の原因となります。

古紙のリサイクルは、資源の有効利用、森林資源の持続可能な利用、廃棄物減量化など、循環型社会の形成に大きく貢献しています。紙をごみとして捨ててしまう前に、まず、リサイクルを考えましょう。




いかがでしたでしょうか?

コロナ禍も相まって、紙・古紙を取り巻く環境は大きく変わっています。近年、森林減少など諸問題が、紙の製造に暗い影を落としています。世界的な環境意識の高まりによって、紙も必要に応じて適切に使用することが求められる現在、紙をただの使い捨ての資源ではなく、再生可能な資源であると見つめ直し、リサイクルすることが求められます。


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