廃棄物排出量の多いアメリカのごみ処理、リサイクルの現状とは?
2021/11/26
生活を送る上でごみが排出されてしまうのは、世界共通のことです。仕方のないこととはいえ、限りある資源を使用しそのまま処分してしまったり、廃棄物を埋立や焼却処分することは環境に大きな負担を与えてしまいます。そのため、ごみの排出量を減らそうという動きが世界各国で見られています。
ごみは「一般廃棄物」と「産業廃棄物」の2つに分かれます。産業廃棄物は各国でルールや処理方法が違い比較が難しいたいめ、家庭ごみで世界のごみ排出量を見てみます。
世界の都市廃棄物排出量は以下のようになっています。(2019年のデータ)
1位 アメリカ
2位 中国
3位 ドイツ
4位 日本
5位 フランス
※グラフの数字はGLOBAL NOTEの統計を使用しています。
一位のアメリカは世界一のGDPを誇る経済大国であり、同時にごみ大国でもあると言えます。では、アメリカのごみ排出量や処理の仕方、またリサイクルなどの現状はどのようになっているのでしょうか?
今回はアメリカのごみ処理やリサイクルについてみていきます。
アメリカのごみと処理の現状
アメリカのごみの発生については、米国環境保護庁(EPA)が公表しています。米国EPAは米国の都市ごみ(Municipal solid waste)の発生、リサイクル、焼却、埋め立て等の情報をまとめ、WEB場で公開しています。米国EPAの都市ごみ時計の対象物は、住居、オフィス、商業施設、公共施設から排出される廃棄物が対象です。日本の環境省の「ごみ」統計の対象物よりも多岐にわたっています。
アメリカの都市ごみ発生量(2018年)は2億9,236万ショートt(※ショートトン=907kg)で、一人1日あたりの発生量は2.2kgでした。素材別内訳の割合は「紙・板紙」が23.1%、「食品」が21.6%、「芝生等庭ごみ」が12.1%、「プラスチック」が12.2%と続きます。都市ごみ発生量は年によっては微減することもありますが、長期的にみると増加傾向にあります。
都市ごみの処理として、リサイクル・コンポスト化・焼却・埋立等がなされています。2018年の米国の都市ごみ処理における手法の割合は、「埋立・その他ディスポーザル」が50.0%、「リサイクル」が23.6%、「焼却(エネルギー回収あり)」が11.8%、「コンポスト化」が8.5%、「その他の廃棄食品の経路」が6.1%でした。埋立処分が半数を占めてはいますが、その割合が年々減少しています。一方で、リサイクル及び堆肥化の比率が増加傾向にあります。なお、世界的に課題とされている「プラスチックごみ」の処理については、埋立が約76%と大半を占め、リサイクルは8.7%にとどまりました。
アメリカでは、各州の固形廃棄物管理計画及び関連する州法に基づいて、郡や市町村等の自治体が地域における一般廃棄物の処理計画の策定と実施を担っています。これらの地方政府やその委託を受けた民間事業者等が一般廃棄物の収集や最終処分を行うことが一般的とされています。例えば、ニューヨーク市においては、市衛生局(Department of Sanitation.)が家庭及び公共施設から排出される廃棄物の処理を担っており、一方で、商業施設の廃棄物は民間の廃棄物回収・処理業者が扱います。
アメリカのリサイクルの現状
現在のアメリカでは一部を除き、リユース・リデュース・リサイクルの3Rがあまりうまく機能していないのが現状とされています。上記で見てきたように環境負荷の高いプラスチックごみも埋立処分するしかないという状況が進んでいます。
米国EPAによれば、アメリカのリサイクル率は32%程度とされ、特に環境負荷が高いとされるプラスチックのリサイクル率は9%程度にとどまるとのこと。そこで、EPAは2021年11月に2030年までに固形廃棄物のリサイクル率を50%に高めるための「国家リサイクル戦略」を発表しました。2030年のリサイクル率50%の目標達成をサポートするものと位置付けられています。
この戦略では、リサイクル商品市場の改善、原材料の選別などによるリサイクル可能な製品の増加、リサイクル過程から生じる環境汚染の減少、など5つの目標が掲げられています。
リサイクル率向上に向けては、各地域でも見られています。
2015年、ニューヨーク市は戦略計画である「One New York」ビジョンを発表しました。そこで市は リサイクル率を大幅に引き上げることを目指すため、2030 年までに埋立処分場に搬出するごみを 2005 年比で 90% 削減する「ごみゼロ」(Zero Waste)目標を掲げました。その方策として、生ごみリサイクルの実証実験である「オーガニック・プログラム」の拡大と、リサイクルごみにおける MGP 及び紙類の区分の単一化を打ち出しました。
カリフォルニア州のサンフランシスコ市は、世界でもっともエコな都市のひとつと言われています。2003年に、「2020年までに埋め立てごみを無くし、生ごみはすべて堆肥化 することで土に返し、他のごみは全てリサイクルする」という「ゼロ・ウェイスト」目標を設定し、3Rにもう一つ加えて、4つのRで活動を進めています。
サンフランシスコでは、家庭のごみは基本的に以下の3つの色別のごみ箱によって分別しています。
緑:「COMPOST(堆肥)」:生ゴミ、紙ナプキン、紙コップ
黒:「Trash/Landfil(埋立て)」:オムツ、プラスチック商品、ペン、COMPOSTとRECYCLE以外
青:「RECYCLE(リサイクル)」:ビン、缶、ペットボトル、段ボール
ごみは毎週決まった曜日に、Recology社により回収されます。料金は、戸建て住宅で各色 32 ガロン(約121ℓ)のごみ箱を利用した場合、月に約 35ドル。ただ、黒のごみ箱を20ガロン(約76ℓ)にすれば25ドルに抑えられるため、住民はできるだけコンポストやリサイクルに回すようになり、「埋立て」用のごみを削減することにつながっています。
また、市では2006年に発砲スチロール容器が禁止に、翌2007年からはレジ袋が有料化されました。さらに2014年には、市役所やコンベンションセンターなど、市所有の建物や広場ではペットボトルの販売も禁止されました。エコバック、ナイフやフォークなどのカトラリー、水筒などは自分で持ち歩き、使い捨てしないことも広がっています。
2012年にはごみの80%をリサイクルや堆肥化、リユースできるようになりました。当時の全米平均は34%しかない中、80%という高い水準となりました。しかし2018年9月に開催されたグローバル気候行動サミット内で、サンフランシスコのロンドン・ブリード市長は、2020年までに「ごみゼロ」を実現できないことを認めました。そして新しく、2030年を期限とする対策を発表し「2030年までに1人当たりのごみの発生を15%削減」「2030年までに埋め立てと焼却への処分を50%削減」という目標を掲げ、サンフランシスコは世界的にみても先進的な挑戦を続けています。
いかがでしたでしょうか?
今回はアメリカのごみ処理やリサイクルについてみてきました。現在の米国の廃棄物管理政策上の優先順位は、上位から、廃棄物の減量化、リサイクル及び堆肥化、エネルギー回収を伴う焼却の順となっており、埋立てを主とする最終処分は最下位の位置付けとなっています。実際、ごみ処理の手法として未だ埋立が大きなシェアを占めていますが、割合は減少傾向にあります。
また、近年、世界的な課題であるプラスチック廃棄物問題への対応として、州や自治体等のレベルで様々な取組が進められています。プラスチックごみを含む廃棄物の削減・資源のリサイクル促進は、今後も変わらず課題であり推進が図られるべきものです。
経済大国でありごみ大国と言えるアメリカ。廃棄物処理やリサイクルに関する動向は今後も注目していきたいところです。
(参考サイト)GLOBAL NOTE