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プラスチックリサイクルの現状、リサイクルの種類とは?

コラム

プラスチックリサイクルの現状、リサイクルの種類とは?

2021/11/24
便利で使いやすい素材のプラスチック。その有用性の一方で、プラスチック廃棄物を取り巻く状況は年々厳しいものとなっています。昨年開始された「レジ袋有料化」や飲食店などでストロー等がプラスチック製から紙製に変更または有料化したりと、私たちの生活にも影響が及んでいます。「海洋プラスチック問題」というのをメディアなどで見聞きした人も多いでしょう。

海洋ごみ・海洋プラスチックごみ問題についてはこちらの記事でも紹介しています。


2021年6月4日には新しい法律である「プラスチック資源循環促進法」が国会で成立しました。これは、深刻化する海洋プラスチックごみ問題や気候変動問題などへの対応を目的としたもので、2022年に施行される予定です。

私たちの生活に深く根付いているプラスチック製品。使用済みとなり廃棄物となったプラスチックの処理や再資源化は、循環型社会を形成する上で、事業者や自治体だけではなく、消費者である私たち一人一人も考えていかなければならないことです。

それでは、日本での廃プラスチックの処理や資源化の現状はどんなものなのでしょうか?またプラスチックをリサイクルするための手法や各々の事例はどういったものがあるのか、今回はこれらについて解説していきます。



日本のプラスチックリサイクルの現状は?

日本の廃プラスチックの総排出量は850万t(2019年、内訳は、「一般系廃棄物」412万t、「産業系廃棄物」438万t)。そのうち、未利用の廃プラが15%。樹脂に再生する「マテリアルリサイクル」が186万tで22 %、プラスチックを分解してモノマーの状態まで戻す「ケミカルリサイクル」が27万tで3%、そしてプラスチックを燃やして燃料にする「サーマルリサイクル」が513万tで60%と大半を占めました。

日本は廃プラスチックのリサイクル率は85%としてきており、これは世界的に見ても高い水準です。しかしCO₂を排出するサーマルリサイクルを除くと、リサイクル率は25%まで激減します。海外にはサーマルリサイクルという言葉はなく、「エネルギー回収」や「熱回収」と呼ばれ、リサイクルの一種には含まれていません。世界基準で日本のリサイクル率を見てみると、決して高い数値であるとは言えません。

循環型社会形成推進基本法でも、廃棄物処理やリサイクルの優先順位は、リデュース(削減)→ リユース(再利用)→ マテリアルリサイクル→ ケミカルリサイクル→ サーマルリサイクル→適正処分の順となっています。今後、持続性が高い循環型社会を作っていくためにはサーマルリサイクル以外でのリサイクルを推進していく必要があるでしょう。


プラスチックリサイクルの種類は?

上記で触れた「サーマルリサイクル」「マテリアルリサイクル」「ケミカルリサイクル」とは一体どんなものなのか、具体的にご紹介していきます。

サーマルリサイクル
廃棄物、主に廃プラスチック処理の焼却の際に発生する熱を、エネルギーとして回収して利用することを言います。日本では、リデュース、リユース、マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクルができない廃棄物の処理のために、サーマルリサイクルが行われる。

サーマルリサイクルでは、分別や技術的に再資源化が難しい廃棄物を処理するのに有効で、温室効果ガスの排出を抑え、埋め立てゴミを低減させることにつながると考えられています。しかし一方で、リサイクルできるはずの資源まで分別されずに燃やしてしまうおそれがあります。

マテリアルリサイクル
マテリアルリサイクルとは、廃棄物を新しい製品の原料として再利用することを主眼としたリサイクル手法のこと。「材料リサイクル」「材料再生」「再資源化」「再生利用」とも言われます。広義では、後述の「ケミカルリサイクル 」を含むこともあります。マテリアルリサイクルは、資源循環に直接貢献するため、サステナビリティが高い手法と言えるでしょう。

なお、2019年の「マテリアルリサイクル」の利用形態別では、再生材料が78%、再生製品が22%となっています。利用先別では、輸出は、2017年末に中国で実施された廃プラスチックの輸入規制強化の影響を受けて減少し43%となりました。

マテリアルリサイクルの例
・金属くずを溶かして新しい金属製品を作る
・プラスチック資材を破砕・加工処理し、再びプラスチックの製品にする
・木くずを粉砕・チップ化し、建材や紙とする
・食品用の使用済みPETボトルを原料化し、新たな食品用PETボトルに再利用する(ボトルtoボトル)
・使用済み缶を破砕・溶融・固形化し、再生地金として缶製造の原材料に再利用する

ケミカルリサイクル
使用済み資源を化学的に処理し、他の化学物質に組織変換した後に再利用するリサイクル手法で、「化学的再生法」とも呼ばれています。

主に、廃プラスチックを油に戻す「油化」やガスにして化学工業原料とする「ガス化」、廃プラスチックからコークス・炭化水素油・コークス炉ガスを得る「コークス炉化学原料化」などを指します。他にも、廃プラスチックの造粒による「高炉還元剤化」、廃プラスチック製品を化学的に分解して原料やモノマーに戻し、再度プラスチック製品に活用する「原料・モノマー化」、生ごみ・紙ごみ・畜産糞尿・草木類などの「バイオガス化」や廃食用油の「ディーゼル燃料化」、「石鹸化」、食品廃棄物や食品製造副産物などの「飼料化」といった技術も含まれます。

ケミカルリサイクルの課題として、品質の良い廃プラスチックの安定確保やコストなどが考えられます。回収される廃ペットボトルの一部にはごみなどが混在しており、適切に分別を行うためには人の手を加える必要があり、その分コストがかさんでしまいます。良質な廃プラスチックの安定的確保が困難であるため、さらなる推進のためには効率的な回収・分別技術の発展が必要となるでしょう。

企業のケミカルリサイクルへの取り組み
AGF
AGF(味の素ゼネラルフーヅ株式会社)は、2016年春季より、主力ボトルコーヒー全商品に、資源循環型の再生耐熱PET樹脂を100%使用したペットボトルを導入。2020年3月に全社プロジェクトとして「プラスチック廃棄物ゼロ化実行プロジェクト」を立ち上げ、資源として循環可能な条件整備については、モノマテリアルプラスチック包装資材や生分解性プラスチック包装資材の導入を検討。

株式会社ファンケル
株式会社ファンケルは、化粧品のボトル容器にケミカルリサイクル技術により作られた100%再生由来のPET素材を採用。さらにこの切り替えを皮切りとし、2023年3月末までに化粧品のPET容器を順次ケミカルリサイクルPET(ポリエチレンテレフタレート)100%の素材へ切り替えていくとのこと。

住友化学・積水化学工業
住友化学と積水化学工業はごみをまるごとエチレンにし、そのエチレンでの樹脂材料「ポリオレフィン」製造に取り組んでいます。ごみを分別なしでエタノールに変換する生産技術の開発に成功した積水化学工業と、ポリオレフィンの製造に関する技術・ノウハウを有する住友化学が協力することにより、ごみをポリオレフィンにケミカルリサイクルするという、サーキュラーエコノミーの取り組みを推進しています。





いかがでしたでしょうか?

廃プラスチックの処理が世界的な課題とされ、日本でも国や企業がプラスチックのリサイクルや再生に向けて様々な動きをしています。しかし、そのためには適切な分別が必要とされます。また、優れた技術を駆使してもプラスチック製品に生まれ変わってしまう可能性が高いもの。世界を取り巻くプラスチックの関する問題を解決するためには、一人一人がプラスチック削減に向けて考え、行動する必要があると言えるでしょう。


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