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広がる「家庭ごみ処理有料化」、メリット・デメリットは?

コラム

広がる「家庭ごみ処理有料化」、メリット・デメリットは?

2021/11/03
日常生活を過ごす上で、全くごみを出さない日はほぼないと言ってよいでしょう。私たちは普段から何かしらのごみを排出しており、令和元年度の1人1日当たりのごみ排出量は918グラムでした。

家庭ごみは基本的に、自治体のごみ回収のサービスを利用して処分してもらう形になります。ごみの分別や捨て方は、自治体によって異なっており、ごみの種類によっては回収にかかる費用が有料である場合もあります。回収が有料といえば、家具などの大型の粗大ごみが思い浮かぶと思います。

ただ、現在、家庭ごみの収集を有料化する動きが全国の自治体で広がっています。今回はこの「家庭ごみ処理有料化」について見ていきます。


家庭ごみ処理有料化とは?

家庭ごみ処理有料化とは、市町村など自治体が一般廃棄物(=家庭ごみ)の処理についての手数料を徴収することを指します。多くの自治体では、自治体が指定した有料ごみ袋をつかって家庭ごみ処理有料化を行っています。ごみを出す量に応じてごみ処理費用を一部負担する仕組みです。なお、手数料を上乗せせず、販売される一定の規格を有するごみ袋(指定袋)の使用を排出者に依頼する場合については「有料化」に該当しません。

家庭ごみの処理有料化の背景には、廃棄物処理法の基本方針の改正があります。この改正により、市町村の役割として「経済的インセンティブを活用した一般廃棄物の排出抑制や再生利用の推進、排出量に応じた負担の公平化及び住民の意識改革を進めるため、一般廃棄物処理の有料化の推進を図るべきである。」と追加され、国全体の施策の方針として、一般廃棄物処理の有料化が明確化されました。このように法律で明確化されたことにより、近年有料化を行う自治体が増えているのです。

家庭ごみ処理の有料化を推進する目的は、環境省の資料によれば下記の4点が記載されています。
有料化の目的
(1)排出抑制や再生利用の推進
一般廃棄物処理を有料化することにより、費用負担を軽減しようとするインセンティブ(動機付け)が生まれ、一般廃棄物の排出量の抑制が期待できる。

(2)公平性の確保
排出量に応じて手数料を徴収する有料化を導入することで、費用負担の公平性が確保できる。

(3)住民や事業者の意識改革
有料化の導入によって、廃棄物排出に係る意識改革につながることが期待される。その結果、廃棄物の発生が少ない商品の選択や不用・不急の商品購入の抑制、製品の再使用の促進が期待される。

(4)その他の効果
環境負荷及び収集運搬費用や処理費用の低減、また、手数料収入を分別収集及びリサイクルの実施に係る費用や集団回収への助成など、循環型社会の構築に向けた一般廃棄物に係る施策の充実が期待できる。

つまり住民が費用負担を軽減しようとすることにより、ごみ問題意識を高めることにつなげたり、ごみの排出者としての責任をより明確にするためです。そして、ごみの排出を抑制したり、ごみの再生利用を促進し、循環型社会に貢献することができると期待されているのです。


家庭ごみ処理有料化のメリット・デメリット

それでは、家庭ごみの処理有料化によるメリットとデメリットはそれぞれどんなものがあげられるのでしょうか?

家庭ごみ処理有料化のメリット
・家庭ごみ排出量の削減
・資源物の分別排出によるリサイクルの推進
・3R(ごみの発生抑制、再使用、再利用)の推進に向けたごみへの意識向上
・焼却場・最終処分場の延命化
・ 事業者における環境負荷を考慮した販売方法や製品開発の推進

有料化を行うことで家庭ごみを削減でき、焼却場や処分場、清掃工場の負担を減らし延命化、自治体の財政負担の経験などにつながるといったメリットが挙げられます。

家庭ごみ処理有料化のデメリット
・家計の金銭的負担の増加
・コンビニエンスストアなどへの不法投棄・不適正排出の増加
・指定袋販売店における事務負担の増加
・ 旧指定袋からの移行時における在庫管理

一方有料化に伴う一番の懸念材料は、市民の金銭的負担が増えることにより、不法投棄や不適正排出の増加に関する問題です。監視カメラの設置や夜間の監視パトロールなど事前に対策をとることにより、不法投棄や不適正排出の顕著な増加は見られなかった自治体もあります。


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家庭ごみの有料化、実施している自治体は?

それでは、家庭ごみ処理有料化を実施している自治体はどれほどなのでしょうか?
全国の自治体を対象とした家庭ごみ処理有料化に関する調査結果を、公共イノベーション事業グループが発表しています。調査期間は2020年1月8日~2月5日、2021年1月に3,000世帯以上を有する全国1,367自治体を調査対象としています。

粗大ごみを除く家庭ごみの有料化を実施している割合は58.0%で、2008年の第1回調査(39%)と比べ19%増加しました。2016年の前回調査(55.4%)からは2.6%の増加がみられており、家庭ごみの有料化を導入する自治体が年々増えていることが見て取れます。

地方区分ごとに有料化の実施率を見てみると、北海道地方が89.4%と最も高く、以下、九州・沖縄地方(79.2%)、中国地方(74.4%)、四国地方(68.8%)と続きます。最も低かった東北地方は38.7%にとどまり、地域差があることがわかりました。

それでは、有料化を実施している自治体の例を見ていきましょう。
北海道登別市
●導入…平成12年4月1日
●分別区分…燃やせるごみ・燃やせないごみ:市指定有料袋、粗大ごみ:有料(個別収集)、資源ごみ:無料
●有料化制度の評価
 ・ごみの有料化に伴い、全体で36%のごみが削減されました。
 ・ごみの有料化が図られることにより、発生・排出の抑制が図られ、また、資源ごみ(びん・缶、ペットボトル)の回収を無料とすることで、資源ごみの適正分別が容易となりました。

東京都調布市
●導入…平成16年4月 
●分別区分…可燃ごみ・不燃ごみ:市指定有料袋、粗大ごみ:ごみ処理券貼付、有害(危険)ごみ・資源物:無料
●有料化制度の評価
・廃棄物排出量の減少、不適正排出の減少、不法投棄の減少、ごみ問題や美化等に関する住民意識の向上が見られました。
・戸別収集も行うことで、7年後にはでごみの排出量が約20%減少。

京都府京都市
●導入…平成18年10月
●分別区分…燃やすごみ:市指定有料袋、資源ごみ(缶・びん・ペットボトル・プラスチック類):市指定有料袋、大型ごみ:粗大ごみ処理券貼付、その他資源ごみ:無料
●有料化制度の評価
・平成15年策定の一般廃棄物処理計画(京都市循環型社会推進基本計画)の減量目標を達成。
・有料化実施にあたっての定期収集ごみ(燃やすごみ)の削減目標は達成、燃やすごみは平成19年度時点で23万トンを切っており、有料化実施にあたっても目標も達成しています。


熊本県熊本市
●導入…平成21年10月
●分別区分…燃やすごみ:市指定有料袋、プラスチック製容器包装:無料、紙:無料、埋立ごみ:市指定有料袋、資源物:無料、ペットボトル:無料、大型ごみ:有料大型ごみ処理券貼付、資源物拠点回収:無料
●有料化制度の評価
 ・平成22年度においては、平成14年度比22.2%削減となり目標を達成、平成23年度においては、平成21年度比11.7%削減となりました。



「記名式ごみ袋」とは?

「記名式ごみ袋」とは、家庭から排出されるごみ袋に氏名を記入することで、複数の自治体で採用されています。

「記名式ごみ袋」の目的は、排出者を特定しやすくすることで、分別等ごみの排出に関する意識向上を図ることです。6年連続でごみ排出量が少ない都道府県1位長野県では、ごみ袋に記名を求める自治体が多く、77市町村中で9割近い69市町村が「記名式ごみ袋」を採用。長野県が公表しているデータによれば、何も施策を行っていない市町村に比べ、「ごみ処理有料化」や「記名式ごみ袋」を行っている市町村のごみ排出量がは少ないことが明らかになっています。

記名式ごみ袋は、ごみの分別が不十分であった場合に排出者を特定しやすいといった点がメリットとして挙げられますが、一方で以下のような問題点もあります。

・プライバシーの侵害
・個人情報流失の懸念
実際に記名式ごみ袋を導入している自治体の住民からも、不安や疑問の声が上がっているようです。

見られたくないものをごみとして出す場合は、
・別の袋に入れて二重にする
・外から見えないよう細かくしたり、袋の中央に入れる
・不透明なもので包む
・クリーンセンターに直接持ち込む
など個人で対策が必要となっています。





家庭ごみ処理有料化は、ごみ排出量の削減やリサイクルの推進など、大きな効果が得られることがわかりました。しかし一方で、市民の金銭的負担や不法投棄・不適正排出などのデメリットも挙げられ、費用負担の公平性の確保等、自治体には様々な対策を講じることが求められます。

私たちは日々ごみを排出しており、ごみ問題は、国や自治体だけではなく私たち一人ひとりも意識していかなければならない大きな課題です。ごみの有料化および記名式ごみ袋と言った施策により、ごみ排出量は減少していますが、今後もごみ削減に向けた取り組みをしていかなければなりません。ごみの排出量を減らすためのアイデアを講じたり、適正な分別、3Rの実施を行うことは、個人や企業のごみ処理コストを削減することになるので、節約にもなります。


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