「電子マニフェスト」とは?〜メリットや導入方法について〜
2021/06/28
事業活動を続けていくにあたり、提出しなければならない書類というのは多様にあります。そのなかでごみにまつわる書類で6月に行政提出する「産業廃棄物交付状況報告書」というものがあります。
この「産業廃棄物交付状況報告書」は「マニフェスト」と呼ばれる「産業廃棄物管理票」に関する報告書です。報告対象者は、マニフェストを交付した排出事業者(中間処理業者を含む)。事業場ごとに産業廃棄物の種類及び排出量やマニフェストの交付枚数等、前年度1年間の状況について、当該事業場の所在地を管轄する都道府県知事、または政令市長へ報告しなければなりません。
法で提出が義務付けられている書類とはいえ、報告書の作成から提出まで時間も手間もかかりますので、「面倒」と感じる方も少なくないでしょう。
しかし、電子マニフェストを利用している場合は、排出事業者が自らの報告は不要となるのです!
今回は「電子マニフェスト」とはどんな仕組みか?どのように導入するのか?について見ていきたいと思います。
まず「マニフェスト」って何?
産業廃棄物管理票=マニフェストとは、産業廃棄物の処理を委託する際に、委託者(排出業者)が発行する伝票のことを指します。産業廃棄物の収集・運搬・中間処理・最終処分などを処理業者に委託する場合、委託者は業者へマニフェストを交付します。
マニフェストは、排出事業者が収集運搬業者、処分業者に委託した産業廃棄物の処理の流れを自ら把握し、不法投棄の防止等適正な処理を確保することを目的としています。そして、排出事業者は、マニフェストを使用し、委託した産業廃棄物が最終処分まで適正に処理されたかどうか確認する義務があります。マニフェストを使用しないと罰則の対象となります。
廃棄物処理は「排出事業者が責任を持って処理しなければならない」と法律で決められています。もしも、処理事業者が廃棄物を不法投棄した場合、責任は委託した排出業者にあります。そのため排出業者は委託先の廃棄物処理工程を把握し、不法投棄がないよう適切に処理する必要があるのです。
電子マニフェストとは?
マニフェストは紙か電子から選択することができます。
電子マニフェスト制度は、マニフェスト情報を電子化し、①排出事業者、②収集運搬業者、③処分業者の3者が情報処理センターを介したネットワークでやり取りする仕組みです。公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が運営を行っています。
電子マニフェストを利用する場合、上述の3者が加入する必要があります。
電子マニフェストの導入により、事務処理の効率化を図ることができるとともに、データの透明性が確保され、法令の遵守を徹底することができます。
電子マニフェストの利用は順調に拡大し、2021年3月に年間の電子化率は65%となりました。
電子マニフェストの仕組み
電子マニフェストを使うメリット
紙ではなく電子マニフェストを使用することで得られるメリットはなんでしょうか?
①事務処理の効率化
電子マニフェストへの入力項目はシステム上管理されているため、記載ミスや記載忘れを防止できます。入力自体も簡単で手間がかからないので、ヒューマンエラーの防止や事務処理の効率化になります。
②廃棄物の処理状況をリアルタイムで確認
廃棄物の運搬終了、処分終了、最終処分終了報告の有無を情報処理センターから排出事業者へ電子メールが配信されますので、廃棄物の処理状況の確認をすることができます。終了報告の確認期限が近づくと排出事業者に注意喚起もしてくれます。
また、画面上でも廃棄物の処理状況を容易に確認できます。
③法令の遵守
マニフェストには原則として6つの運用基準があり、相違があった場合、罰則規定に抵触することとなります。マニフェスト情報は情報処理センターが管理・保存し、セキュリティも万全です。
排出、収集、処分の3者が常にマニフェスト情報を閲覧・監視することにより、不適切なマニフェストの登録・報告を防止できます。
④産業廃棄物管理票交付等状況報告が不要
上述したようにマニフェストを交付した排出事業者は年に一度、「産業廃棄物交付状況報告書」を作成し、提出しなければなりません。
しかし、電子マニフェストを利用している場合は、日本産業廃棄物処理振興センターが都道府県知事等に報告を行いますので、排出事業者が自らの報告は不要となります。
⑤マニフェストの保管が不要
使用したマニフェストは写しを5年間保存しなければいけません。5年間、書類を社内に保管するのは、保管スペースの確保や管理に労力を費やすことになります。電子マニフェストならばマニフェスト情報は情報処理センターに保存されるので、排出事業者自ら保管する必要はなく、いつでもマニフェスト情報を確認することが可能です。
電子マニフェストを導入するには?
電子マニフェストを導入するにはどのようなステップが必要なのでしょうか?
1.処理委託先がJWNETに加入しているか確認
電子マニフェストを導入するためには排出、収集、処分の3者が電子マニフェストを使用=JWNETに加入していることが必要になります。
まずは、処理委託先すべての加入状況について確認しましょう。JWセンターのサイトから加入者を検索することができます。Web上で加入が確認できない場合でも、念のため処理委託先に直接確認するとよいでしょう。→JWセンター:加入者情報検索
2. 加入単位の検討
排出事業者の場合、JWNETに加入する「単位」を任意で決めることができます。
排出事業場ごと、たとえば工場や支店の単位での加入が最もシンプルな形となります。しかし、外部倉庫や営業拠点など、年に数回、数年に一度しか廃棄物の排出をしない現場を見落としていることがあるので注意が必要です。
3. 導入コストや費用を確認・料金区分を選択
主に多量のマニフェスト情報を取り扱う場合に適した「A料金」と、少量のマニフェスト情報を取り扱う場合に適した「B料金」があります。年間のマニフェスト登録件数が2,400件以上の場合はA料金が安価になりますので、これまでの紙マニフェストの年間発行枚数を確認し、選択するとよいでしょう。
4. 処理委託先と運用方針を決める
★受渡確認票の運用を決める
「受渡確認票」とは、電子マニフェストを運用するときに使用される補助的な伝票で、入力した内容を網羅できる確認証のようなものです。産業廃棄物の受け渡しの際の内容確認、収集運搬時の書類携帯義務の書類として利用する事ができます。
収集運搬会社が運搬する際に携帯する書類の一つに、運搬する廃棄物の情報を種類・数量・運搬受託者の氏名・名称・積み地、荷卸し地などを記載した書類が義務付けられているので、これを受渡確認票で充当するケースが多いです。
★マニフェスト登録のタイミング
排出事業者は廃棄物の引渡しから3日以内にマニフェスト登録をする必要があります。廃棄物を排出した当日にマニフェスト登録をするのか、廃棄物の排出見込みがある程度、分かった段階で、事前に予約登録をしておくのか等、マニフェスト登録をする際の手順を決めておくことが重要です。
排出予定が決まった時点で予約登録を行い、排出後に本登録されるケースが多いです。こうすることで、マニフェスト番号が記載された受渡確認票がJWNETから印刷できるようになります。当然ながら、排出事業者がマニフェストを登録しないと収集運搬会社・処理会社は終了報告ができないので注意が必要です。
★数量確定者を誰にするか
マニフェスト制度では排出事業者が廃棄物の数量を入力することが廃棄物処理法で定められています。排出事業場に計量機が無いなど排出事業場で正確な数量を把握することが難しい場合には、数量確定者を収集運搬会社または処分会社に設定することで、正確な数量が確定値として反映され、管轄自治体に報告されます。排出事業者、収集運搬業者、処分業者のうち、誰を数量確定者とするのかを事前に決めておくことが重要です。
今回は「電子マニフェスト」についてその仕組みや導入法について簡単に見ていきました。
マニフェストは産業廃棄物を排出、処理の委託をした事業者が交付しなければならないものなので、手間をかけずに効率的に事務処理を行うためにも、電子マニフェストの運用を検討されてみてはいかがでしょうか?
参考サイト:公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター
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